放射光(X線)で小さなものを観察する大きな2つの施設

暗黒生態系に潜む原始的古細菌の謎の生態を解明
――深海底熱水噴出孔の岩石内部に増殖の鍵――


2024年11月5日
東京大学
理化学研究所
高輝度光科学研究センター


発表のポイント

◆生命進化の最初期に誕生したと考えられる原始的古細菌は、ゲノムと細胞のサイズが小さく、アミノ酸や脂質を合成する能力を欠くため、どのように増殖するのか不明であった。
◆生命誕生場として有力視される深海底熱水噴出孔で採取した岩石内部で、原始的古細菌は鉱物の隙間に密集しており、そのゲノムとプロテオームの解析に成功した。
◆発見された原始的古細菌は、周囲の鉱物の働きを用いて自力で合成できない物質を入手していることが示唆された。この様子は生命進化最初期の生き様を反映している可能性が高い。



生命進化最初期の微生物の生息場


東京大学大学院理学系研究科の鈴木庸平准教授を中心とした、同大学大学院農学生命科学研究科、慶應義塾大学、理化学研究所、広島大学、高輝度光科学研究センターの研究者から成る共同研究グループは、南部マリアナトラフの深海底熱水噴出孔から採取したチムニー(注1)の内部を調べた。チムニーの内壁は黄銅鉱の塊で、その内部でシリカに詰まった網目状の隙間に、微生物が密集することが判明した。
チムニーから黄銅鉱の内壁のみを取り出して、その部分からDNAとタンパク質を抽出して配列を決定した。解読されたゲノム情報から、生息する微生物の30%はDPANN古細菌(注2)で、生命活動を維持するために必要な遺伝子を多く欠損していたことが判明した。しかし発現するタンパク質に発酵でエネルギーを生産する遺伝子(注3)が含まれており、チムニー内部で活発に代謝活動をしていた。
これまで培養に成功しているDPANN古細菌は、宿主の古細菌に外部共生することが知られるため、環境中でも外部共生すると予想されていた。その予想に反し、チムニー内部に優占するDPANN古細菌は、外部共生ではなく、単独で生息していることが示唆された。生育必須遺伝子の欠如を鉱物の働きで補っている可能性があり、宿主が誕生する前の原始的な生活様式を反映すると考えられる。


論文情報
雑誌名: ISME Journal
題名 :Genome-resolved metaproteogenomic and nanosolid characterization of an inactive vent chimney densely colonized by enigmatic DPANN archaea
著者:Hinako Takamiya, Mariko Kouduka, Shingo Kato, Hiroki Suga, Masaki Oura, Tadashi Yokoyama, Michio Suzuki, Masaru Mori, Akio Kanai, and Yohey Suzuki*
DOI:10.1093/ismejo/wrae207


【背景】

近年のDNA配列決定技術の発達により、地球上のさまざまな環境に生息する微生物ゲノムが解読された。生命進化の理解が飛躍的に向上しているが、特に従来は1つの遺伝子情報に基づいていた全生物の共通祖先の推定が、現在では100を超える遺伝子の情報から推定することが可能になった。その結果、細胞とゲノムのサイズが通常の微生物と比べて格段に小さいDPANN古細菌が、共通祖先に近縁であると判明した(図1)。この原始的な古細菌はゲノム中に生命材料物質の合成遺伝子やエネルギー獲得に必要な遺伝子を欠損するため、環境中でどのように増殖しているか不明であった。



図1:ゲノム情報に基づく生命進化の系統樹


【本研究の実験内容】

本研究で用いたチムニー試料内部を(図2A)、最先鋭の電子顕微鏡解析技術で観察した結果、細胞サイズが0.2μmより小さい極小微生物が岩石を構成する黄銅鉱の隙間から発見されているが(関連のプレスリリース①)、10μm四方でしか観察できない問題があった。そこで大型放射光施設SPring-8(BL17SU)の放射光(注4)を用いて微生物の主要元素C、N、および鉱物の主要元素Fe、Cu、Si、Oの分布を1cm四方の広い範囲で調べた。その結果、網目状の隙間でC、N、Si、Oの分布が重なり(図2B)、その領域からタンパク質とシリカが赤外分光法(注5)による分析で検出され(図2C)、微生物がシリカで充填された隙間にチムニー内壁全体で分布することが明らかとなった。



図2:チムニー内壁試料の分析結果

(A)チムニーから作成した薄片の写真。チムニー内壁は金色の黄銅鉱から成る (B)SPring-8の放射光を用いた分析で得られた黄銅鉱の隙間におけるSi、C、Nの分布。上の図では、Siを赤、Cuを緑、Feを青で色付けした画像を重ねあわせている。そのため、黄銅鉱は水色で示され、シリカはピンク色で示されている。下図は上図と同じ領域で、元素の分布を重ねあわせており、黄銅鉱の隙間のシリカに微生物由来の炭素と窒素が分布する。 (C)赤外分光法により黄銅鉱の隙間から得られたタンパク質とシリカを含むスペクトル。


チムニー内壁部の微生物を対象としたメタゲノム解析(注6)により、DPANN古細菌のゲノムを解読した結果、ゲノム中にはアミノ酸や脂質等の合成に関わる遺伝子が欠如していたことが分かった。エネルギー獲得に関しては、発酵の遺伝子を断片的に有し、発酵でエネルギーを生成する遺伝子がタンパク質レベルで発現していることが、メタプロテオーム解析(注7)により明らかになった。生活様式に関しては、他の生物との外部共生を示す証拠は見つからず、単独で生きていることが示唆された。欠損する生合成や発酵系の遺伝子の代わりに、岩石の構成鉱物である黄銅鉱とシリカが供給を補うことが知られており、代謝に必要な物質の供給が共生する宿主からでなくても、岩石内部であれば増殖できることが示された。


【成果の意義と今後の展望】

光合成生物が生成した有機物や酸素に依存しない暗黒生態系は、光合成生物誕生前の地球の初期生態系と類似しているため重要視される。光合成産物の代わりに、岩石と水の反応で生産される物質に栄養を依存するが、その反応でシリカは普遍的に形成される。シリカは脂質を濃縮することが知られており、周りの海水による希釈を防ぐことで、原始生命が外部から脂質を取り込む上で有利に働いたと考えられる。
生命誕生当時は遺伝子数が少なく、酵素の代わりに鉱物の触媒作用に依存していたと考えられる。黄銅鉱は発酵の反応を触媒し、初期地球に普遍的に存在したことが知られる。本研究で明らかとなった岩石内で鉱物に依存しながら生活するDPANN古細菌の生き様は、原始生命の現在想定される姿と良くマッチするため、生命誕生当時の特徴を色濃く残していると期待される。
DPANN古細菌は地下深部で、微生物群集内での割合が増加することが知られており、地下深部の岩石内部のゲノムやプロテオームの解析と共存する鉱物の解析を組み合わせることで、原始的古細菌の生態や進化をより詳細に理解し、生命の起源の解明につなげていく予定である(関連のプレスリリース②)。


○関連情報

プレスリリース① 深海底熱水噴出孔で始原的な微生物を発見-銅まみれの予想外の生態が発見の鍵-」(2022/06/07)
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2022/7925/

プレスリリース② 20億年前の岩石内部に生きた微生物を発見-粘土で詰まる隙間に高密度で生息-」(2024/10/02)
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/10513/


【発表者・研究者等情報】

東京大学
 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻
  鈴木 庸平 准教授
  幸塚 麻里子 特任研究員
  高宮 日南子 博士課程学生(研究当時)

 大学院農学生命科学研究科 応用生命化学専攻
  鈴木 道生 教授

慶應義塾大学 先端生命科学研究所
  金井 昭夫 教授
  森 大 特任助教(研究当時)

理化学研究所
 放射光科学研究センター 軟X線分光利用システム開発チーム
  大浦 正樹 チームリーダー

 バイオリソース研究センター 微生物材料開発室
  加藤 真悟 上級研究員

広島大学 大学院先進理工系科学研究科
  横山 正 准教授

高輝度光科学研究センター ナノテラス事業推進室
  菅 大暉 研究員


【研究助成】

本研究は、科研費 挑戦的研究萌芽(課題番号:22K19340)の支援により実施されました。


【用語解説】


(注1) チムニー
煙突に対応する英語で、金属と硫化水素に富む黒色の熱水(ブラックスモーカー)が、深海底から噴出する場で、同心円上に金属硫化物が固体として沈殿して形成される構造体。


(注2) DPANN古細菌
複数の門をまとめた古細菌の系統グループ。2013年に初めて提唱され、細胞とゲノムのサイズが小さく、培養に成功した種は非常に少ない。ゲノム中に生命活動の維持に必要な遺伝子を欠くため、生態に不明な点が多い。


(注3)発酵でエネルギーを生産する遺伝子
グルコースからピルビン酸に分解する解糖系と呼ばれる10反応のうち、4反応を触媒する酵素のみがゲノムにコードされており、そのうちATPを生成してエネルギー生産する遺伝子が、タンパク質として発現することが本研究で明らかとなった。


(注4)大型放射光施設SPring-8の放射光
理化学研究所が所有する兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す大型放射光施設で、利用者支援等は高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っている。SPring-8(スプリングエイト)の名前はSuper Photon ring-8 GeVに由来。第3世代型と呼ばれるSPring-8は、強い放射光で物質の特性を調べることが可能である。本研究は、ビームラインBL17SUの高輝度軟X線アンジュレータ光を用いた走査型蛍光顕微鏡で分析を行った。SPring-8の強い放射光を用いたため、ビーム径を0.6 μmまで絞っても炭素、窒素等の軽元素から銅や鉄等の重元素の分布を高感度で明らかにできた。


(注5)赤外分光法
赤外線は可視光線の長波長範囲の電磁波で、その電磁波を試料に照射してスペクトルを得る方法。本研究では0.5 μmの空間分解能でスペクトルを取得した。


(注6)メタゲノム解析
複数の微生物種が存在する試料から抽出したDNAを、ハイスループットシーケンサーで塩基配列を決定し、その得られた断片的配列から生物情報技術によりゲノム配列を組み立てる。構築されたゲノム配列中の遺伝子情報から代謝や進化等の推定が可能である。


(注7)メタプロテオーム解析
複数の微生物種が存在する試料から抽出したタンパク質を、高精度の液体クロマトグラフ質量分析でアミノ酸配列を決定し、その得られた断片的配列をメタゲノムで得られた遺伝子配列と照合し、試料中で発現するタンパク質の起源生物や種類を特定する。


〈研究内容について〉
東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻
准教授 鈴木 庸平(すずき ようへい)

〈報道に関する問合せ〉
東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室
Tel:03-5841-8856 E-mail:media.sgs.mail.u-tokyo.ac.jp

理化学研究所 広報室 報道担当
Tel:050-3495-0247 E-mail:ex-pressml.riken.jp

高輝度光科学研究センター
 利用推進部 普及情報課
Tel:0791-58-2785 E-mail:kouhouspring8.or.jp

(SPring-8 / SACLAに関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター
 利用推進部 普及情報課
TEL:0791-58-2785 FAX:0791-58-2786
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〈研究内容について〉
東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻
准教授 鈴木 庸平(すずき ようへい)

〈報道に関する問合せ〉
東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室
Tel:03-5841-8856 E-mail:media.sgs.mail.u-tokyo.ac.jp

理化学研究所 広報室 報道担当
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高輝度光科学研究センター
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SPring-8光源大改修の設計指針を公表
-グリーン加速器へ大変身-


2024年10月24日
理化学研究所
高輝度光科学研究センター


理化学研究所(理研)放射光科学研究センターの田中均副センター長、先端放射光施設開発研究部門の後藤俊治部門長、高輝度光科学研究センター(JASRI)加速器部門の渡部貴宏部門長らの共同研究チームは、ユーザー運転開始から約30年が経過した大型放射光施設「SPring-8」[1]の老朽化対策、性能の大幅な向上と電力削減を同時に満たすグリーン[2]大改修(SPring-8-Ⅱ[3])の設計指針を公表しました。
今回の大改修では、挿入光源[4]技術の進歩を取り入れた蓄積電子エネルギーの低減、偏向電磁石から永久磁石への置き換え、併設するX線自由電子レーザー(XFEL)[5]施設「SACLA[6]」の線型加速器の入射器としての時間分割利用[7]マルチベンドアクロマット(MBA)ラティス[8]の採用による最小到達エミッタンス[9]を組み合わせ、消費電力を半減させつつ、光源輝度[10]を約100倍向上させます。
本成果は、放射光科学分野で国際的に最も権威のある科学雑誌『Journal of Synchrotron Radiation』オンライン版(10月24日付:日本時間10月24日)に掲載されました。


アンジュレータ放射の輝度がSPring-8-ⅡではSPring-8と比べ大幅向上


論文情報
雑誌名: Journal of Synchrotron Radiation
題名 :Green Upgrading of SPring-8 to Produce Stable, Ultrabrilliant Hard X-ray Beams
著者:Hitoshi Tanaka, Takahiro Watanabe, Toshinori Abe, Noriyoshi Azumi, Tsuyoshi Aoki, Hideki Dewa, Takahiro Fujita, Kenji Fukami, Toru Fukui, Toru Hara, Toshihiko Hiraiwa, Kei Imamura, Takahiro Inagaki, Eito Iwai, Akihiro Kagamihata, Morihiro Kawase, Yuichiro Kida, Chikara Kondo, Hirokazu Maesaka, Tamotsu Magome, Mitsuhiro Masaki, Takemasa Masuda, Shinichi Matsubara, Sakuo Matsui, Takashi Ohshima, Masaya Oishi, Takamitsu Seike, Masazumi Shoji, Kouichi Soutome, Takashi Sugimoto, Shinji Suzuki, Minori Tajima, Shiro Takano, Kazuhiro Tamura, Takashi Tanaka, Tsutomu Taniuchi, Yukiko Taniuchi, Kazuaki Togawa, Takato Tomai, Yosuke Ueda, Hiroshi Yamaguchi, Makina Yabashi, and Tetsuya Ishikawa
DOI:10.1107/S1600577524008348


【背景】

大型放射光施設「SPring-8」は1991年から建設が始まり、光源の心臓部を担う加速器システムは運転開始から30年近くが経過しています。そのため、老朽化が甚だしく、安定した信頼性の高い運転の継続が難しい状況です。加えて、同様の海外放射光施設の更新が先行して進められ、SPring-8の光源としての国際競争力の維持が困難な状況にもなっています。よって、早期にSPring-8放射光施設の大規模改修に着手する必要がありました。
この大規模改修では、2050年までのカーボンニュートラルの達成に向け、社会・生産基盤のグリーン化[2]の加速が求められる中、光源性能の飛躍的な向上と同時に、どのように要素機器の小型化(省資源化・カーボンフットプリント(CFP)[11]の削減)と使用電力の削減(省エネルギー化・高効率化)を達成していくかが課題とされていました。


【研究手法と成果】

SPring-8-Ⅱの大規模改修は、既に稼働している放射光源の大改修であることから、(i)既存のリングトンネルの再利用、(ii)全ての挿入光源ビームラインの光軸の維持、(iii)現在の利用可能なスペクトル領域の維持、(iv)運転停止期間の最小化(1年程度)という制約が課せられます。これらの制約の中で、性能の大幅な向上、老朽化対策と電力削減を実現するため、SPring-8とSACLAの高度化とユーザー運転の経験で得た知識を基に、以下のようなシステム構成を立案しました。
性能の大幅な向上は、SPring-8の主要ターゲットが硬X線領域であることを考慮し、電子ビームエミッタンスが50~110pm.rad(pm:ピコ(1兆分の1)メートル、rad:ラジアンは角度の単位)の範囲で調整可能な設計としました。エミッタンスの調整は、長直線部に設置するダンピングウィグラー(DW)[12]により行います。この設計コンセプトにより、SACLAからの高品質入射ビームを利用したオフアクシスビーム入射[13]が可能なリングの安定領域が確保でき、標準アンジュレータ[14]において約2桁の輝度増大(図1)を達成できます。



図1 SPring-8とSPring-8-Ⅱのアンジュレータ放射の輝度の比較
SPring-8-Ⅱの標準アンジュレータの輝度は、SPring-8よりも2桁ほど高くなると見込まれる。
pm:ピコ(1兆分の1)メートル、nm:ナノ(10億分の1)メートル。rad:角度の単位。


蓄積リングは一新されますが、リング専用の入射器とその特高変電所(大電力を効率よく送電するための高電圧を、通常の機器が使用可能な低電圧レベルに変換する設備)の老朽化対策が課題として残ります。この更新には、巨額の費用がかかり、簡単に性能向上が見込めないため、それらを更新するのではなく、全てをシャットダウンし、ビーム入射器の役割を、併設する新しいSACLAの線型加速器に担わせるスキーム(図2)を考えました。これは老朽化対策のコストを削減するだけでなく、施設の電力消費削減にもつながります。SACLAの運転電力を増やさずに、リングへビームを入射させるスキームを実現するため、線型加速器を時間分割で利用できるように2016年から必要な開発と整備を進めました。この結果、2021年4月から、SPring-8-Ⅱに先行する形でSACLA線型加速器からの現SPring-8へのビーム入射をユーザー運転に導入し、同年8月にリング専用の入射器とその特高変電所をシャットダウンすることができました注1)。完成したシステムは、SPring-8-Ⅱのビーム入射を担います。


注1)2021年11月23日プレスリリース「SPring-8-IIに向けSACLAを高性能入射器として利用」
https://www.riken.jp/press/2021/20211123_1/



図2 SACLAの線型加速器のリングビーム入射器としての時間分割利用
リング専用の入射器などを運用停止し、ビーム入射器の役割を新しいSACLAの線型加速器に担わせる。
線型加速器の時間分割利用により、SACLAの運転電力を増やことなくリングへビームを入射できる。


電力削減、省資源化に関しては、下記三つの省電力化を組み合わせることで、SPring-8-Ⅱ以降の消費電力量を2021年3月までと比べて半減できる見込みです(図3)。
(i)蓄積ビームエネルギーを8から6ギガ電子ボルト(GeV、1GeVは10億電子ボルト)に下げる一方、アンジュレータの周期長を短く(例えば標準型で32mmを22mm)して短波長のスペクトル領域を維持する。
(ii)全ての偏向電磁石を永久磁石に置き換える。
(iii)リングの専用入射器をシャットダウンして、SACLAの線型加速器をリングの入射器として時間分割使用する。



図3 SPring-8のグリーン大改修による電力削減効果
蓄積ビームエネルギーを下げたり、偏向磁石を電磁石型から永久磁石型に変換したりするなどして、
大改修したSPring-8-Ⅱは、性能が飛躍的に向上する一方で、消費電力量が半減する見込み。


【今後の期待】

2027年度から現SPring-8を停止し、加速器の大改修を行うことを目指し、2025年度からその計画(SPring-8-Ⅱ)をスタートさせるためのさまざまな協議・準備が行われています。SPring-8には、光源高度化の長年の積み上げとSACLAの高度化、ならびに運転の経験が施設に蓄積されています。リング光源の性能が上がるにつれて、その運転は難度の高いものになりますが、XFELで培った経験と知識を十二分に活用しながら、高性能のSPring-8-Ⅱのフル活用を早期に実現し、他施設に先んじて、未踏のサイエンスを切り開くことが期待されます。


【補足説明】


[1] 大型放射光施設「SPring-8」
理研が所有する、兵庫県の播磨科学公園都市にある世界でもトップクラスの放射光を生み出す大型放射光施設で、利用者支援などはJASRIが行っている。SPring-8(スプリングエイト)の名前はSuper Photon ring-8 GeVに由来する。放射光を用いてナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われている。


[2] グリーン、グリーン化
グリーンとは、省エネルギー・省資源で、持続的発展が可能な特性を指し、グリーン化とは、施設やシステムを持続的発展が可能な省エネルギー・省資源な形態に変えていくことを表す。SACLAやSPring-8の利用実験を通じて地球温暖化や天然資源の枯渇などの環境問題に対処するためのイノベーションを創出することで、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、施設自体もグリーン化していくことが要請される注2)

注2)2021年8月23日プレスリリース「SPring-8・SACLA グリーンファシリティ宣言」
https://www.riken.jp/pr/news/2021/20210823_2/


[3] SPring-8-Ⅱ
SPring-8の大幅な性能向上を目指した次期計画の名称。「8-Ⅱ」には電子ビームの蓄積エネルギーを8から6GeVへ下げる(8マイナス2)という意味も込められている。


[4] 挿入光源
蓄積リングのフリーな直線部に設置する光源の総称。電子ビームを交番磁場(向きが入れ替わる磁場)で周期的に蛇行させ前方に強い放射光を発生させる。蛇行の振幅を小さくして、干渉により特定の波長のシャープなスペクトルを生成するアンジュレータと、大きく蛇行させ広帯域に明るい光を発生するウィグラーの2種類がある。


[5] X線自由電子レーザー(XFEL)
X線領域におけるレーザーのこと。従来の半導体や気体を発振媒体とするレーザーとは異なり、真空中を高速で移動する電子ビーム(自由電子)を媒体とするため、原理的な波長の制限はない。また、数フェムト秒(1フェムト秒は1,000兆分の1秒)の超短パルスを出力する。XFELはX-ray free electron laserの略。


[6] SACLA
理研とJASRIが共同で建設した日本で初めてのXFEL施設。2011年3月に施設が完成し、SPring-8 Angstrom Compact free electron LAserの頭文字を取ってSACLA(サクラ)と命名された。2011年6月に最初のX線レーザーを発振、2012年3月から共用運転が開始され、利用実験が行われている。大きさが諸外国の同様の施設と比べて数分の1とコンパクトであるにもかかわらず、0.1ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)以下という世界最短波長級のレーザーの生成能力を持つ。


[7] 時間分割利用
英語ではタイムシェアリングユース。一つのシステムを、時間を分割して複数のユーザーや機器で使用すること。SPring-8-Ⅱでは、SACLAの線型加速器の電子ビーム(60パルス/秒)をXFELの発生とリングへのビーム入射にパルスごとに使い分ける。このため線型加速器の運転電力は増えない。


[8] マルチベンドアクロマット(MBA)ラティス
ラティスとは、放射光リングを構成する磁石の単位構造のことを指し、ラティスが4以上の偏向磁石から構成され、かつラティスの両端でエネルギー分散関数がゼロに閉じる条件を満たす場合をマルチベンドアクロマット(MBA)ラティスと呼ぶ。エミッタンス([9]を参照)が偏向磁石の偏向角の3乗に依存するため、回折限界光源と呼ばれる最近の低エミッタンスリングでは、マルチベンドアクロマットラティスが採用されている。MBAはmulti-bend achromatの略。


[9] エミッタンス
ビームの断面積と角度広がりをかけた値で、電子ビームの品質を表す指標の一つ。エミッタンスが大きいと低品質で大きく広がりやすい電子ビーム、エミッタンスが小さいと小さくシャープで良質な電子ビームといえる。単位はnm-radなど。


[10] 光源輝度
電子ビームから放出される単位時間(秒)、単位バンド幅(0.1%)、単位立体角(1mrad2)、単位光源サイズ(mm2)、単位蓄積電流(100mA)当たりの光子数。この値が大きいほど、小さいサンプルに特定の光子エネルギーの多くの光子を照射することができる。


[11] カーボンフットプリント(CFP)
商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算した指標。CFPはcarbon footprintの略。


[12] ダンピングウィグラー(DW)
電子ビームのエミッタンスを低減するため、磁石により電子を蛇行させて放射光を発生させる装置。SPring-8-Ⅱでは、4本の長直線部にこのダンピングウィグラーの設置が可能となっている。DWはdamping wigglerの略。


[13] オフアクシスビーム入射
電子ビームを軌道上に入射させる手法の一つ。電子ビームを直接軌道上に導きたいが、そこには以前に入射した電子ビームが周回している。そこで、周回ビームを弾き飛ばすことなく、軌道上へ入射ビームを落とし込むため、軌道から数ミリずれたところに電子ビームを入射させて、放射減衰で電子ビームの振動を軌道へ収斂(しゅうれん)させる入射方式。


[14] アンジュレータ
NとSの磁極を交互に上下に配置し、その間を通り抜ける電子を周期的に小さく蛇行させ、特定の波長を持った光を作り出す装置。


発表者・機関窓口
<発表者>
理化学研究所 放射光科学研究センター
  副センター長 田中 均(タナカ ヒトシ)
先端放射光施設開発研究部門
  部門長    後藤俊治(ゴトウ・シュンジ)

高輝度光科学研究センター 加速器部門
 部門長     渡部貴宏(ワタナベ・タカヒロ)

<機関窓口>
理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 050-3495-0247
Email: ex-pressml.riken.jp

高輝度光科学研究センター
 利用推進部 普及情報課
Tel: 0791-58-2785
Email: kouhouspring8.or.jp

(SPring-8 / SACLAに関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター
 利用推進部 普及情報課
TEL:0791-58-2785 FAX:0791-58-2786
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発表者・機関窓口
<発表者>
理化学研究所 放射光科学研究センター
  副センター長 田中 均(タナカ ヒトシ)
先端放射光施設開発研究部門
  部門長    後藤俊治(ゴトウ・シュンジ)

高輝度光科学研究センター 加速器部門
 部門長     渡部貴宏(ワタナベ・タカヒロ)

<機関窓口>
理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 050-3495-0247
Email: ex-pressml.riken.jp

高輝度光科学研究センター
 利用推進部 普及情報課
Tel: 0791-58-2785
Email: kouhouspring8.or.jp

(SPring-8 / SACLAに関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター
 利用推進部 普及情報課
TEL:0791-58-2785 FAX:0791-58-2786
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熱電変換材料を高性能化させる新たなメカニズムを発見
~元素添加で材料内の原子をつなぐバネが軟らかに~


2024年10月11日
名古屋工業大学
高輝度光科学研究センター


【発表のポイント】

・元素添加で熱電変換材料内の原子をつなぐバネが軟らかくなることを発見
・発見した新しいメカニズムは熱電変換材料に求められる低熱伝導率の実現に活用可能
・エネルギー問題解決に向けた高性能な熱電変換材料開発への展開に期待


名古屋工業大学 物理工学類の木村耕治助教、宮崎秀俊准教授、西野洋一名誉教授、林好一教授、高輝度光科学研究センター(JASRI)の筒井智嗣主幹研究員らの研究グループは、最先端の計測技術であるX線非弾性散乱※1を用いて、Fe2VAl熱電変換材料※2にTiを添加することによって、材料内の原子をつなぐバネが軟化することを見出しました。これは、元素添加による熱伝導※3率低減を説明する新たなメカニズムです。熱電変換材料には低い熱伝導率が求められ、本研究で見出したメカニズムは大いに活用することができます。将来、本研究に基づいた、持続可能で安全性が高く高効率な熱電発電はもちろん、原子をつなぐバネが重要な役割を果たす圧電材料や誘電体材料などの新規創成、高性能デバイスの開発につながると期待されます。
本研究成果は、2024年9月28日にActa Materialia誌に掲載されました。

論文情報
雑誌名: Acta Materialia
題名 :Thermal insulation enhanced by the dopant-induced phonon softening discovered in thermoelectric Heusler compounds
著者:Koji Kimura, Satoshi Tsutsui, Hidetoshi Miyazaki, Shuma Nakagami, Yoichi Nishino, Koichi Hayashi
DOI:10.1016/j.actamat.2024.120439


【研究の背景】

世界で生産されるエネルギーの約6割は利用されずに熱として廃棄されていると言われています。熱電変換は、このような廃熱を電気エネルギーに直接変換できる技術であり、エネルギー問題解決に向けたキーテクノロジーの一つとして注目されています。そのため、性能の高い熱電変換材料の開発が世界中で精力的に進められています。
熱電変換材料には、電気を良く通し、熱を通しにくいという両立するのが難しい性質が求められます。これらの性質を実現するため、材料に異種元素を添加するという手法がよく用いられます。元素添加により、電気特性を制御できるとともに、図1に示すように熱伝導を抑制し温度差を効果的に保持することができるためです。
材料をミクロに見ると、原子が互いにバネでつながれて配列していると考えることができます。ある原子が振動するとバネを通じてその振動が伝搬していく様子が想像できますが、これが熱伝導に相当します。ここへ周囲よりも重い元素が添加されると振動が伝わりにくくなり、熱伝導が抑制されます。そのため、重元素添加が、性能の高い熱電変換材料を開発する一つの指針として提唱されています。しかし、周囲とそれほど重さの変わらない元素を添加した場合にも熱伝導が低減する材料も多数報告されており、背後にあるメカニズムに関して多くの謎が残されているのが現状です。



図1 元素添加による熱電変換材料の熱伝導低減の様子


【研究の内容・成果】

本研究グループは、Fe2VAlという熱電変換材料に注目しました。この材料は、様々な元素の添加により熱伝導が低減することが報告されています。図2(a)にTa(タンタル)およびTi(チタン)をFe2VAlのV(バナジウム)の位置に添加したときの熱伝導率の変化を示します。同図に周期表の一部を切り出して示していますが、母元素のVから見てTaは二周期下の重い元素、Tiは隣に位置するほぼ同じ重さの元素になります。重い元素であるTaを添加した方が大幅な減少が見られますが、Ti添加でも熱伝導の低減が顕著です。しかし、母元素とTiの質量差がわずかであることを考慮すると、図2に点線で示すようにTi添加ではほとんど熱伝導率は低下しないと見積もられ、実験結果を説明できません。ここには従来の理解では捉えきれない、未知のメカニズムが潜んでいると期待できます。



図2 TaおよびTiを添加したFe2VAlの格子熱伝導率


そこで本研究ではX線非弾性散乱という手法を使って、TaおよびTiを添加したFe2VAl中の原子の振動状態を調べました。この手法を利用すると、フォノンの分散関係※4と呼ばれる原子の振動状態を表す相関関係が分かります。国内では、大型放射光施設SPring-8※5でのみ、海外を含めても数か所でしか実施できない非常に高度な計測技術です。実験はビームラインBL35XUにおいて実施しました。なお、同じ試料に対しBL02B2で原子の並び方を調べ、TaとTiがFe2VAlのVの位置に入っていることは確認できています。
図3(a)(b)にX線非弾性散乱で得られたTaおよびTiを添加したFe2VAlのフォノンの分散関係を示しますが、両者に違いがあることが分かります。Ta添加Fe2VAlでは、図3(a)下部にオレンジ色でハイライトしたように重い添加元素特有の振動モードが現れ、これが熱の伝搬を阻害していることが示唆されました。一方で、Ti添加試料では、このような振動モードは現れず、図3(b)の上部に示すように添加量の増加に伴い格子振動エネルギーが低下する様子が観測されました。このことは、Ti添加により原子同士を結ぶバネがソフト化したことを示しています。Ti添加の場合は、このソフト化により熱伝導が低減したと考えられます。一番固い物質であるダイヤモンドが世界最高の熱伝導率を示すことからも、逆に軟らかくなれば熱伝導率が下がることが予測されます。このように、同じ熱伝導率低減でも添加元素の種類によって、全く異なるメカニズムが働いていることが分かります。特に、Ti添加によるバネのソフト化は、新たに見出された熱伝導低減メカニズムです。
次に、ソフト化の原因についてですが、図2の周期表でTiがVとは異なる族に属していることがポイントとなります。これは、図4(a)に示すように価電子の数が異なることを意味します。原子は原子核と電子から構成されますが、原子核から離れた外側の電子が価電子です。原子が集まってできる物質中では、価電子は原子と原子を仲介し結合を作ります。実はこれが原子をつなぐばねの正体で、ちょうど図4(b)のようなイメージになります。ここへ族の異なるTiを添加すると、もともと過不足の無かった価電子の数が変化し、図4(c)のように結合が弱まりソフト化につながったと理解できます。これに対し、Vと同じ族のTaではこのような効果は生じなかったと考えられます。すなわち、TiとTaでは近隣の原子との結合に関わる価電子の数が異なることが図3の(a)と(b)の違いを生んでいると考えられます。SPring-8では物質中の電子の性質を調べることも可能で、本研究では実際にBL27SUにおいてTaとTiを添加した試料で結合に関わる価電子の状態が異なることも実測しています。



図3 X線非弾性散乱により導出した(a) Taおよび(b) Tiを添加したFe2VAlのフォノン分散



図4 (a) TiとVの原子構造。(b) Fe2VAlおよび(c) Ti添加Fe2VAlの電子密度分布のイメージ図


【社会的な意義】

本成果は、熱電変換材料を設計・探索する上で、新たな機軸を提供します。特に、熱伝導率低減のために用いられてきた重元素には希少なものや毒性のあるものが多いため、必ずしも添加元素を自由に選べるわけではありませんでした。この研究により、軽元素も含めた周期表の広い範囲を使って、熱伝導率の低い高性能材料を開発する筋道ができたと言えます。また、価電子数の異なる添加元素はもともと電気特性の制御を意図して使われていましたが、今回、同時に熱伝導率低減も引き起こすことが分かったことで、一つの元素に複数の役割を持たせた、省資源で環境にやさしい材料設計も可能となります。今後、本研究で見つかったメカニズムに立脚した材料探索が新たな潮流となり、優れた熱電変換材料の開発、さらには圧電材料や誘電体材料など格子振動が重要な役割を果たす材料の創成がより一層加速すると見込まれます。将来的には、熱電発電が盛んに使われている宇宙航空分野、本格導入に向けて精力的に研究されている自動車分野などを中心とした産業分野への波及効果も期待されます。


【今後の展望】

今回見つかったメカニズムを利用すれば、熱伝導を低減させるだけでなく逆に増大させる材料設計も可能です。従って、集積回路、自動車のエンジンやバッテリーなど熱を逃がす必要のあるシステムの設計においても、本研究の知見を活かすことができます。今後、他の元素を添加したFe2VAlや、別の材料系の元素添加効果を、最先端放射光技術を用いて解析し、熱電変換の分野にとどまらず、広くサーマルマネジメント※6の分野へ波及する成果の創出が期待されます。


本研究は、日本学術振興会 科学研究費 学術変革領域研究(A)「超秩序構造が創造する物性科学」(代表者:林好一)(20H05878, 20H05881)等の支援を受けて実施しました。


【用語解説】


※1. X線非弾性散乱
物質にX線を照射して生じる散乱X線を分光することで、物質を構成する原子の振動状態を解析する手法。高強度のX線と極めて精密な分光技術が必要であるため、SPring-8のような大型放射光施設でのみ実施可能である。


※2. 熱電変換材料
熱エネルギーを電気エネルギーに変換できる材料。材料の両端に温度差を与えると起電力を生じるゼーベック効果を利用している。工場や自動車のエンジンなどから出る廃熱を電力に変換する研究開発が進められており、エネルギー問題の解決に向けて大きな注目を集めている。


※3. 熱伝導
材料内の電子の移動による寄与と、格子振動による寄与がある。この記事では後者の格子振動による寄与のみを考えることとする。


※4. フォノンの分散関係
格子振動を粒子として捉えたもの。複雑な格子振動を理解する上で有用な概念である。フォノンの分散関係とは、横軸にフォノンの波数、縦軸にフォノンのエネルギーをプロットし、両者の関係を表現したものである。


※5. 大型放射光施設SPring-8
理化学研究所が所有する兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す大型放射光施設で、利用者支援等はJASRIが行っている。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8 GeVに由来。放射光を用いてナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われている。


※6. サーマルマネジメント
電子デバイスや自動車のエンジン、電気自動車のバッテリーなどの様々なシステムを適正な温度に保つための、熱の制御・管理のことを指す。近年、電子機器の小型化に伴い、その発熱対策として重要性が高まっている。


本件に関するお問い合わせ先
研究に関すること
名古屋工業大学 物理工学類
助教 木村耕治

高輝度光科学研究センター
主幹研究員 筒井智嗣

広報に関すること
名古屋工業大学 企画広報課
TEL: 052-735-5647 E-mail: このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。

高輝度光科学研究センター
 利用推進部 普及情報課
TEL:0791-58-2785 E-mail: このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。

(SPring-8 / SACLAに関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター
 利用推進部 普及情報課
TEL:0791-58-2785 FAX:0791-58-2786
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血管収縮因子エンドセリンと受容体タンパク質が形成する複合体構造を解明


2024年10月16日
国立大学法人筑波大学
学校法人沖縄科学技術大学院大学学園
国立大学法人東京大学
国立研究開発法人理化学研究所
国立大学法人東北大学
国立大学法人京都大学


 クライオ電子顕微鏡を用いて、血管収縮作用を持つペプチドホルモンであるエンドセリンについて、その受容体およびGタンパク質(細胞膜上で情報伝達を担うタンパク質)との複合体構造を調べ、細胞間での情報伝達メカニズムを明らかにしました。


 ヒトは約60兆個の細胞で構成されており、細胞間での情報交換が協調的に行われることで、正常な生命活動を維持しています。各細胞は細胞膜に包まれ、細胞外からのさまざまなシグナルは、細胞膜の受容体タンパク質によって細胞内に伝えられます。血管収縮作用を持つペプチドホルモンであるエンドセリン(ET)については、細胞膜に存在するエンドセリンB型受容体(ETBR)との結合構造が解明されていますが、ETBRとGタンパク質(細胞膜上で情報伝達を担うタンパク質)の天然結合状態の複合体構造は未解明であり、情報伝達メカニズムも十分に理解されていません。
 本研究では、クライオ電子顕微鏡を用いて、ET、ETBR、Gタンパク質の複合体構造を観察しました。その結果、Gタンパク質とETBRが強く結合する構造が明らかになりました。また、Gタンパク質の種類を識別するメカニズムや、受容体の活性化に関わる要因を解明しました。
 本研究成果は、ETによる細胞情報伝達メカニズムの理解を深めるだけでなく、立体構造に基づいた新しい薬剤設計に役立つと期待されます。


論文情報
【題 名】 Structure of endothelin ETB receptor-Gi complex in a conformation stabilized by unique NPxxL motif.
(エンドセリンB型受容体とヘテロ三量体Gタンパク質の複合体構造と生化学的特性)
【著者名】 Kazutoshi Tani, Saori Maki-Yonekura, Ryo Kanno, Tatsuki Negami, Tasuku Hamaguchi, Malgorzata Hall, Akira Mizoguchi, Bruno M. Humbel, Tohru Terada, Koji Yonekura & Tomoko Doi
【掲載誌】 Communications Biology
【掲載日】 2024年10月16日
【DOI】 10.1038/s42003-024-06905-z


研究代表者
筑波大学 計算科学研究センター
 谷 一寿 教授
沖縄科学技術大学院大学 イメージングセクション (当時)
 ブルーノ・ホンベル 博士
東京大学 大学院農学生命科学研究科
 寺田 透 教授
理化学研究所 放射光科学研究センター/東北大学 多元物質科学研究所
 米倉 功治 グループディレクター/教授
京都大学 大学院理学研究科
 土井 知子 博士


研究の背景
 エンドセリン(ET)は21のアミノ酸残基から成るペプチドホルモンで、血管収縮作用があります。エンドセリン受容体注1)は、細胞膜に存在するタンパク質で、細胞内外の分子と相互作用して、細胞間の情報伝達に関与します。細胞外からエンドセリンが受容体に結合すると、受容体の構造はGタンパク質(細胞膜上で情報伝達を担うタンパク質)と相互作用しない不活性型から、Gタンパク質と相互作用できる柔軟な初期活性型に変化します。その後、受容体構造はGタンパク質と複合体を形成して完全活性化型に移行します。この複合体形成を通してGタンパク質の構造にも変化が起こり、Gタンパク質のαサブニットに結合していたGDPはGTPに交換され、Gタンパク質が活性化されることで、細胞内の応答(情報伝達)が引き起こされます(図1)。エンドセリンにはET-1、ET-2、ET-3の3種類があり、このうちET-1は主に血管内皮細胞で産生され、周囲の細胞や自己の細胞に取り込まれ、血圧を調節し血流を一定に保つ局所的な血流調節に寄与します。さらに、体液の恒常性維持や神経発生、細胞増殖などにも重要な役割を果たします。エンドセリンは、高血圧症、動脈硬化症、心不全、腎不全、がんなど多様な病態に関与しており、その作用機構を正しく理解し適切に調節することで、病態の軽減が期待されます。
 2016年にX線構造解析を用いて決定されたエンドセリンとその受容体の結合構造が解明されて以来、さまざまな状態の受容体の立体構造が明らかになっています。一方、エンドセリンに関する情報伝達機構については、昨年2つの研究グループにより、NanoBiTシステム注2)を用いて複合体構造が明らかにされましたが、天然結合状態の様式は依然として明らかになっておらず、薬剤開発につなげるための知見が不足しています。


研究内容と成果
 エンドセリン受容体は、細胞膜に埋め込まれているGタンパク質共役型受容体(GPCR)注3)の一種で、細胞膜から取り出すと変性しやすい特性があります。そこで、ヒトのエンドセリン受容体の安定性や剛直性を高めるために、5つの点変異(一塩基の変異)を導入した変異体(Y5-ETB)を開発し、これを用いて、X線結晶解析により受容体とエンドセリンの複合体構造を決定することに成功しました。しかし、5つのうち4つの点変異を元の野生型に戻すと、複合体の分解能は低下し、アミノ酸残基の位置を特定することはできませんでした。最終的に、ドミナントネガティブ注4)と呼ばれる変異を導入して安定化したGタンパク質ファミリーの一つであるGi注5)(DNGi)を用いたところ、受容体とGiの間にNanoBiTシステムによる Giの安定化がなくても安定な複合体を形成させることに成功しました。さらに、クライオ電子顕微鏡注6)でこの複合体を分析し、アミノ酸残基が可視化できる分解能で、立体構造を決定することができました(図2)。
 この構造解析により、三量体Gタンパク質のαサブニット(Gαi)(図3a:マゼンタ色リボン)のC末端側の特徴的なフック構造(C351-F354)、それに続く10残基(D341-D350)がET-1結合受容体タンパク質(ETBR)の細胞質側結合ポケットにぴったりと収まり、結合している様式が明らかになりました(図3a)。また、ETBRとGαiの相互作用領域は、既知のG-GPCR複合体構造と比較して少なく、主にGαのC末端側のみが関与していることが分かりました(図3b)。この相互作用の多くは、どのGαでも保存されているアミノ酸配列によって行われるため、選択性が比較的低く、様々なGαと反応できることを説明できます。一方で、Gαの種類によって異なる相互作用領域もわずかながら存在し、特に受容体のICL2領域がGタンパク質の種類を見分ける可能性が示唆されました。
 また、GPCRにおいて、7番目の膜貫通領域で保存されているアミノ酸配列(NPxxY)が、ETBRではユニークな配列NPxxLとなっています。本解析で得られた完全活性型ET-1結合ETBRを不活性型ETBR 構造と比較すると、NPxxL領域が活性化に伴って細胞質側に動くというユニークな構造変化を起こしていることが分かり(図4a, b)、このロイシン(L)部分は受容体の完全活性化やGα結合ポケットの形成に重要であることが、生化学実験や分子動力学シミュレーションによって実証されました(図4c)。


今後の展開
 本研究により解明された完全な活性化型構造情報は、受容体を活性化する小分子リガンド注7)化合物や抗体医薬など、副作用の少ない中分子薬の設計につながると期待されます。また、別の型のエンドセリン受容体であるETAに関しても、NanoBiTシステムを用いない天然の分子機構を解明できれば、ETA型とETB型それぞれのサブタイプに対して選択性の高い作動薬開発が可能になると考えられます。


参考図

図1 エンドセリン受容体の活性化スキームの図説。

図1 エンドセリン受容体の活性化スキーム。細胞外からエンドセリン(ET-1)が細胞膜上の受容体(ETB)に結合すると、細胞内の三量体Gタンパク質のGDPがGTPに交換され、Gタンパク質が活性化される。その結果、細胞内のカルシウムイオン濃度上昇などの、細胞応答が誘導される。



図2 クライオ電子顕微鏡により可視化されたET-1–ETBR–Gαi複合体の立体構造図。

図2 クライオ電子顕微鏡により可視化されたET-1–ETBR–Gαi複合体の立体構造。(a) デンシティマップ注8)。 (b) タンパク質の種類ごとに色分けしたリボンモデル。 (c) 活性化状態に応じたETBRの構造変化。不活性化型(赤)、ET-1結合型の初期活性化状態(青)、ET-1–Gαi結合型の完全活性化型状態(緑)。(b)および(c)の破線部分の詳細は、それぞれ図3(a)、図4(a)に対応する。



図3 エンドセリン受容体(ETBR)とGαi複合体のカルボキシル(C)末端側の結合様式図。

図3 エンドセリン受容体(ETBR)とGαi複合体のカルボキシル(C)末端側の結合様式。(a) 相互作用しているアミノ酸残基。破線は水素結合を示す。受容体はレインボー色、GαiのC末端はマゼンタで表す。(b) 相互作用部分のアミノ酸配列。Giを基準に、GqやGsなどの異なるGαタンパク質で同一アミノ酸配列の場合はマゼンタ、性質の似たアミノ酸配列の場合はオレンジ、異なるアミノ酸配列の場合は黄色で表す。細胞内側ループ領域注9)ICL1よりもICL2の方が、相互作用しているGαタンパク質のアミノ酸残基が種類に応じて変化する場合が多い。



図4 受容体の細胞質側付近における膜貫通部位の構造変化の図説。

図4 受容体の細胞質側付近における膜貫通部位の構造変化。(a, b) それぞれエンドセリンB型受容体(ETBR)とμオピオイド受容体(μOR)の不活性型(赤)、初期活性化型(青)、完全活性化型(緑)を重ねて表示している。μORでは、7番目の膜貫通領域に存在するTyr336が5番目の膜貫通領域に近付き、水素結合を形成しているが、ETBRでは対応するアミノ酸残基はLeu386であり、この部分には破線領域の空間が存在する。(c) 活性型ETBRの構造に対する分子動力学シミュレーションにより得られた、タンパク質の近傍に存在する水分子の占有率。(a)および(c)の破線部分に水分子が存在することが示唆される。


用語解説


注1)エンドセリン受容体
細胞表面の膜に存在するタンパク質で、細胞外からエンドセリンを結合することで活性化され、細胞内にさまざまな応答を引き起こす。


注2)NanoBiTシステム
細胞内でのタンパク質間相互作用を検出するために開発された技術。発光酵素を分割し、それぞれの標的タンパク質に融合させ、標的タンパク質同士で相互作用が起こる際に生じる発光現象を利用して、分子間相互作用を検出することができる。


注3)Gタンパク質共役型受容体(GPCR)
細胞膜上に存在する膜タンパク質で、神経伝達物質やホルモンを受容することで構造を変化させ、細胞内のシグナル分子を介して情報を伝達する。細胞膜を7回貫通する特徴的な構造を持つことから、「7回膜貫通型受容体」とも呼ばれる。現在使用されている薬剤のおよそ半数以上がGPCRに関連しており、医薬品のターゲットとしても注目されている。


注4)ドミナントネガティブ
複数のサブユニットで構成される複合体において、変異型のサブユニットが組み込まれると、正常なタンパク質の機能が阻害され、複合体全体の機能が著しく損なわれることがある。このような変異型をドミナントネガティブという。構造解析においてGPCRとGタンパク質の結合状態を安定化させるための手法として用いられる。


注5)Gi
Gタンパク質の中で、主に細胞内シグナル伝達において抑制的な役割を担う重要な分子で、多くのシグナル伝達経路においてさまざまな細胞機能を抑制する。心筋細胞など特定の細胞において、カリウムチャネルを活性化し、心拍数の低下や抑制的な神経伝達などをもたらす。


注6)クライオ電子顕微鏡(Cryo-EM)
超低温で生体の高分子構造を立体的に解析する手法の一つ。本研究では、理化学研究所のSPring-8に設置されたCRYO-ARM300と、沖縄科学技術大学院大学のTalos Arcticaを使用した。


注7)リガンド
特定の受容体と結合する化学物質の総称。受容体を活性化するものと、不活性化するものの2種類がある。特に、可逆的な相互作用を通じて受容体を活性化し、特定の生理作用を引き起こすリガンドを作動薬と呼ぶ。


注8)デンシティマップ
原子や分子による電荷の分布を示したもので、クライオ電子顕微鏡などを用いて得られた実験データから計算により求められる。このマップ(図1a)に従って原子モデル(図1b)が構築される。


注9)ループ領域
生体高分子の構造において、αヘリックスやβシートといった二次構造の間に存在するフレキシブルな部分で、屈曲や輪の立体構造を形成する。特に、エンドセリン受容体の細胞内側ループ領域は、Gタンパク質との相互作用に重要であり、N末端側から順にICL1, ICL2, ICL3と番号付けされることが多い。


研究資金
 本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業(BINDS:JP21am0101118, JP21am0101116, JP22ama121006, JP23ama121004, JP23ama121027)、JST未来社会創造事業(JPMJMI23G2)、科研費(JP20H03210)、京都大学リサーチ・デベロップメントプログラム いしずえ2019、量子情報生命科学研究センター等の支援を受けて実施されました。


お問い合わせ先
【構造生物学研究に関すること】
谷 一寿(たに かずとし)
筑波大学 計算科学研究センター 教授
URL: https://www.cryoem-tokai.jp/

【生物化学研究に関すること】
土井 知子(どい ともこ)
京都大学大学院理学系研究科 博士

【取材・報道に関すること】
筑波大学 計算科学研究センター広報・戦略室
TEL: 029-853-6260
E-mail: pratccs.tsukuba.ac.jp

沖縄科学技術大学院大学(OIST) メディア連携セクション
TEL: 098-982-3447
Email: mediaatoist.jp

東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部
事務部 総務課総務チーム 広報情報担当
TEL: 03-5841-8179, 5484  FAX: 03-5841-5028
E-mail: koho.aatgs.mail.u-tokyo.ac.jp

理化学研究所 広報室 報道担当
TEL: 050-3495-0247
E-mail: ex-pressatml.riken.jp

東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagenatgrp.tohoku.ac.jp

京都大学 渉外・産官学連携部広報課 国際広報室
TEL: 075-753-5729
E-mail: commsatmail2.adm.kyoto-u.ac.jp

(SPring-8 / SACLAに関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター
 利用推進部 普及情報課 
 TEL:0791-58-2785
 FAX:0791-58-2786
 E-mail:このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。

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大型放射光施設SPring-8を用いて、電気化学反応中の触媒状態を可視化する技術を開発 
高効率な触媒設計でCO2資源化を推進し、カーボンニュートラル社会の実現をめざす


元記事は、2024年10月4日日立製作所様 研究トピックスをご覧ください
株式会社日立製作所


日立は、電気化学反応によるCO2資源化技術において、大型放射光施設SPring-8*1(BL16XU)の高輝度X線を用いて、反応中の触媒*2の状態をリアルタイムで可視化する技術を開発しました。本技術により、触媒の反応性や耐久性の向上などに関する具体的な指針が得られ、高効率な触媒設計が可能となることが期待されます。日立は、大学や研究機関、企業との共同研究を通じて、電気化学反応によるCO2資源化技術の開発を推進し、持続可能なカーボンニュートラル社会の実現に貢献します。


近年、地球温暖化ガスである大気中のCO2を回収して資源化する技術がカーボンニュートラル社会の実現に向けて期待されています。その中で、電気化学反応によりCO2を還元してエチレン(C2H4)などの有用な化成品原料に変換する技術においては、反応を効率よく進めるための触媒が特に重要な役割を果たします。しかしながら、従来の方法では、反応前後の状態しか分析できないため、反応中に触媒の状態がどのようになっているのかがわかりませんでした。


今回、電気化学反応とX線計測を同時に行える電気化学セルを新たに開発し、日立が長年にわたり研究開発してきた放射光計測技術の一手法であるX線マイクロビームによる走査型蛍光X線顕微鏡*3と融合させることで、多孔質電極上部の触媒(今回は銅)が、反応中に電極内部に分散していく様子をリアルタイムで捉えることに成功しました(図1)。本技術により可視化した反応中の触媒の状態変化は、これまでに想定されていない新しい知見であり、触媒の反応性や耐久性向上に関する具体的な指針につながります。



図1 X線マイクロビーム走査型蛍光X線顕微鏡を利用し、電気化学反応中の触媒の状態をリアルタイムで可視化


本技術はCO2資源化にとどまらず、水電解や蓄電池などの他の電気化学反応にも適用可能です。今後、日立は、大学や研究機関、企業との共同研究を通じて、電気化学反応によるCO2資源化技術の開発を推進し、持続可能なカーボンニュートラル社会の実現に貢献します。なお、本技術は、2024年10月6日~11日にホノルルで開催されるPRiME 2024*4で発表されます。


【用語解説】


※1. 大型放射光施設SPring-8
兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す施設。放射光は、電子をほぼ光速に加速し、その進行方向を電磁石で曲げたときに発生する強力な電磁波のこと。レントゲンなどの市販X線装置から発生するX線に比べて10000倍以上の明るい光なため、市販装置では見えないものを見ることができる。日立は、産業用専用ビームライン建設利用共同体(略称サンビーム、1996年12月~2024年3月)への参画などを通じて、多方面の技術分野に放射光を活用した研究開発を進めている。


※2. 触媒
化学反応を促進する物質のこと。目的の化学反応に適した触媒を用いることで、反応速度を増加させたり、反応選択性を高めたりすることができる。


※3. X線マイクロビームによる走査型蛍光X線顕微鏡
集光したX線マイクロビームを試料に照射し、照射位置から放出される元素固有のエネルギーを持つ蛍光X線から元素の種類を検出する。試料を高精度に走査することでミクロンオーダーでの元素分布像が得られる。


※4. PRiME 2024
PRiME 2024 (Pacific Rim Meeting on Electrochemical & Solid‐State Science)


本件に関するお問い合わせ先
株式会社日立製作所 研究開発グループ
問い合わせフォームへ

(SPring-8 / SACLAに関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター
 利用推進部 普及情報課
TEL:0791-58-2785 FAX:0791-58-2786
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