放射光(X線)で小さなものを観察する2つの施設

SACLAとは 

 

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SPring-8レベルのX線では原子や分子の瞬間的な動きや変化を見るためには強度が足りません。そこで考案されたのがX線自由電子レーザー(XFEL)です。

 

レーザー技術はDVDの読み取り装置や医療機器、溶接などさまざまな分野で活用されています。その光は指向性と収束性に優れていて、遠くの小さな対象物でもピンポイントで照らすことが出来ます。レーザーポインタと懐中電灯を思い浮かべれば、通常の光との違いはイメージできるでしょう。

 

なぜそういう特性があるかというと、レーザーは光源から次々にでてくる光の波がぴったり揃っているからです。またレーザーは通常の光より短い時間にエネルギーを集中できるという特性(パルス特性)もあります。そこでX線をレーザー化し、両者の長所を備えた光を作ることで、あたかも超高速ストロボ写真のように、瞬間的な原子や分子の動きが捉えられるようになります。そのような光(X線自由電子レーザー)を作りだす施設がSACLAなのです。

 

また、SACLAとSPring-8の間にある相互利用実験施設は、同じ敷地内にあることが世界的にも強みです。SACLAの強力な光をさまざまな材料に当て、変化する様子をSPring-8の光で観察するという実験によって、これまでに人類が見たことのない新しい現象が見られるかもしれません。SACLAの光は、想像を超える可能性を秘めています。

 

 

 

SACLAの歴史

 

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2006年  3月      科学技術基本計画における国家基幹技術として選定、施設の建設・整備開始
   
2011年  3月  施設が完成、愛称は公募にて「SACLA」に決定
   
2011年  6月  X線自由電子レーザーの発振に成功(世界最短波長0.12nm)
   
2011年  7月  波長0.08nmのX線レーザー発振に成功
   
2011年10月  0.063nm(世界最短波長)のX線レーザー生成に成功
   
2012年  3月 供用運転開始、マルチビームライン開発着手
   
2013年10月 グッドデザイン賞受賞「来るべき社会の礎を築くと認められる」グッドデザイン・未来づくりデザイン賞に選出 
  第42回日本産業技術大賞を理研播磨研究所他9団体が共同受賞(日刊工業新聞社主催)
   
2016年  2月                            マルチビームライン化(2本のビームラインにX線レーザーを同時供給)に成功(世界初)
   

  

 

SACLAの放射光

 

自然現象や生命活動の根源を探ると、その多くは原子や分子の並びかたや動き、そしてそれらの集まりの中での電子の動きまでさかのぼります。原子や分子の配列と動きや、電子の動きを直接観察できれば、難病の原因解明と薬の創出、地球環境を悪化させる物質の抑制方法の確立など、私たちの生活の向上に大きく役立つと期待されています。

 

病院の診断でもおなじみのX線は、1895年にレントゲンによって発見されたもので、可視光に比べとても波長が短い光であることから、原子や分子のレベルで物質の微細構造を観察するのに利用されてきました。 SPring-8は世界で最も強いX線光源ですが、それでも原子や分子の瞬間的な動きを観察するためには強度が足りません。

 

非常に強い光を出す光源としてレーザーがあります。X線のレーザーができれば、原子や分子の瞬間的な動きを観察することができます。レーザーは位相の揃ったコヒーレントな光(波の山と山、谷と谷が揃った光)を発生し、様々な光技術に応用されていますが、従来のレーザー技術の延長で波長の短いX線レーザーを作ることは不可能でした。

 

X線でのレーザーを作る方式として、従来の物質中での発光現象を使う方式ではなく、電子を高エネルギー加速器の中で制御して運動させ、それから出る光を利用する方式が提案されました。原子からはぎ取られた自由な電子を用いてX線レーザーを作ることから、X線自由電子レーザー(X-ray Free Electron Laser : XFEL)と呼ばれます。このXFELによって、原子や分子の瞬間的な動きを観察することが可能となります。

 

xfel

SACLAの仕組み 

 

SACLAは、全長700mの細長い構造です。加速器棟(電子銃)、光源棟、そして実験研究棟(データ解析)からなります。

 

SACLA

加速器棟の電子銃で発生させた電子は、全長400mの加速器によって最大で8GeV(80億電子ボルト)まで加速されます。

 

全長240mの光源棟では、100mに及ぶ真空封止型アンジュレータにより電子を精密に繰り返し蛇行させ、X線自由電子レーザー(XFEL)を発生させます。このXFELはSPring-8の10億倍の明るさで、世界一短い波長をもちます。

 

 

こうして発生させたXFELは実験研究棟の入口ハッチで加工され、その下流の実験ハッチでさまざまな実験に利用されます。

 

 

SACLAのビームライン

 

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 過飽和吸収実験イラスト  金粒子の回折
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SACLAの将来

 SACLA  

 

 

SPring-8は1997年に、SACLAは2012年に供用を開始しました。

 

SPring-8は建設後ほぼ20年が最先端施設としての寿命と考えられ、世界で第一線級の施設であり続けるためには、2020年代にてSPring-8-Ⅱへの大改修は避けて通れません。

 

SACLAもいづれ大改修が必要となります。SPring-8-Ⅱの大改修から20年後に予想されるSPring-8-Ⅲでは、リング型のX線自由電子レーザーが実現しているかもしれません。

 


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