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地球の奥深くに沈み込んだ海底の岩石を発見
― 実験・理論計算・地震観測を組み合わせ、プレートが核付近まで到達したことが明らかに ―
2026年6月10日
明治大学
高輝度光科学研究センター
東京大学
岡山大学
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明治大学理工学部の新名良介准教授、米谷珠萌同大学院生(当時)、高輝度光科学研究センター(JASRI)の河口沙織主幹研究員(当時、現:京都大学 特定准教授)、東京大学大学院理学系研究科の河合研志准教授、佐藤嶺同大学院生(当時)、大鶴啓介同大学院生(当時)、物質・材料研究機構(NIMS)の佐久間博主幹研究員、末原茂主幹研究員、岡山大学(惑星物質研究所)の石井貴之准教授で構成される研究グループは、地球深部を再現する実験、原子レベルの理論計算、地震波観測を組み合わせることで、海洋プレートとともに地球内部へ沈み込んだ岩石が、深さ約2900kmの「核―マントル境界」注1付近まで到達している可能性を示す新たな証拠を得ました。 |
研究のポイント
1. 実験:地球深部の環境を実験室で再現
本研究グループは、レーザー加熱ダイヤモンドアンビルセル注5を用いて、最大178GPa、6000Kに達する超高圧・高温条件を作り出しました。これは、地球の核―マントル境界付近に相当する極限環境です。さらに、SPring-8のBL10XUで新しく開発されたシステムを用い、レーザー加熱の開始と同時に、高速量子ビーム測定(放射光X線回折注6測定)を行い、SiO2がどの結晶構造として現れるのかを、加熱直後の非常に短い時間で捉えました。従来の実験では、長時間の加熱や冷却の途中で、本来安定ではない「準安定相」が成長してしまい、SiO2の相転移境界を正確に決めることが難しいという課題がありました。本研究では、測定時間を最短10ミリ秒まで短くし、レーザー加熱、X線回折測定、温度測定を精密に同期させることで、この問題を大きく抑えました。放射光X線のもつ、輝度が非常に高く、平行性が良いという特性を活かした成果です。
2. 理論計算:原子レベルで相転移の理由を検証
実験だけでは、観測された相がなぜ安定なのか、また過去の研究でなぜ異なる結果が出たのかを十分に説明することはできません。そこで本研究グループは、量子力学に基づく第一原理計算と分子動力学計算を用いて、低圧力で安定な相(CaCl2型SiO2)とseifertiteのエネルギー差を調べました。その結果、核―マントル境界に近い条件では、両者の自由エネルギー差が非常に小さいことがわかりました。これは、微小な領域では熱揺らぎによって準安定相が一時的に生じやすいことを意味します。つまり、過去の実験で相境界が不明瞭になった理由を、理論計算によって説明できたことになります。
3. 地震観測:実験で得た“目印”を地球深部で探す
実験と理論計算で決めたseifertite相転移の条件を、実際の地球内部に当てはめると、沈み込んだ岩石を探すことができます。本研究グループは、独自に開発を行った波形インバージョン法を用いて、中央アメリカ下の最下部マントルを伝播するP波とS波の速度構造を調べました。その結果、核―マントル境界の100~300km上方で、S波が遅く、P波が速いという特徴的な異常が見つかりました。このようなP波とS波の反対向きの変化は、SiO2がseifertiteへ変化することで説明できるため、沈み込んだ岩石の証拠となります。また、沈み込んだ低温の岩石は核―マントル境界の上方で、この相境界を二度横切ることがわかりました。これは「ダブルクロッシング」と呼ばれる現象で、この現象を応用することで地球深部において岩石の温度を決定できる可能性があります。
実験・理論・観測、三つの手法をつなぐことで見えた地球深部の姿
本研究の大きな特徴は、実験・理論計算・地震観測のいずれか一つだけでは到達できない結論を、三つの手法を組み合わせることで導いた点にあります。
高圧高温実験は、地球深部でSiO2がどの条件で構造を変えるのかを直接調べる手段です。一方で、実験には温度の揺らぎや準安定相の問題があり、観測結果の解釈には注意が必要です。理論計算は、その実験結果が熱力学的に妥当かどうかを検証し、準安定相がなぜ生じるのかを原子レベルで説明します。そして地震観測は、実験と計算で得られた鉱物学的な“目印”が、実際の地球内部に存在するかどうかを確かめる役割を果たします。
今回、実験で決定されたseifertite相境界は、理論計算とも整合的でした。さらに、その相境界を地球内部の温度構造に重ねると、中央アメリカ下で観測された地震波速度異常の深さとよく対応しました。これにより、実験室の数十マイクロメートル規模の試料で見つかった鉱物の変化が、地球規模の深部構造を理解する手がかりになることが示されました。
地球深部に届いたプレートの痕跡
中央アメリカ周辺では、長い地質時代にわたって海洋プレートの沈み込みが続いてきたと考えられています。本研究で見つかった地震波速度異常は、こうした沈み込んだ海洋プレート注7由来の岩石が、核―マントル境界付近まで運ばれている可能性を示しています。一方、ハワイ下でもS波速度の低下が見られましたが、P波速度構造が得られていないため、中央アメリカほど強い証拠とはいえません。ただし、ハワイ下の沈み込んだ岩石は中央アメリカ下よりも高温である可能性があり、地域ごとの温度差によってseifertite相転移の深さや地震波速度異常の現れ方が変わることも示唆されました。
成果の意義
核―マントル境界は、地球内部の熱と物質のやり取りが集中する重要な領域です。ここに沈み込んだ海洋プレート由来の物質が存在すれば、マントル対流、地球内部の熱輸送、長期的な地球進化に影響を与える可能性があります。本研究は、SiO2の相転移という鉱物物理学的な現象を、地震波形観測と結びつけることで、地球深部の物質循環を読み解く新しい方法を示しました。特に、実験・理論計算・地震観測を組み合わせた今回のアプローチは、今後、地球内部に残された沈み込みプレートの痕跡や、マントル底部の化学的不均質性を解明するための重要な手法になると期待されます。
【用語解説】
注1. 核―マントル境界
地球のマントルと外核の境界。深さ約2900 kmに位置し、地球内部の熱・物質進化を考えるうえで重要な場所。
注2. SiO2(二酸化ケイ素)
石英などの主成分として知られる物質。海洋地殻にはSiO2が多く含まれている。地球深部では高圧力により異なる結晶構造をとる。
注3. Seifertite(ザイフェルタイト)
SiO2が非常に高い圧力下でとる高密度の結晶構造。地球の下部マントル最深部に相当する条件で安定になる。
注4. 大型放射光施設SPring-8
理化学研究所が所有する兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す大型放射光施設で、利用者支援等は高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っている。SPring-8(スプリングエイト)の名前はSuper Photon ring-8 GeVに由来。SPring-8では、放射光を用いてナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われている。
注5. レーザー加熱ダイヤモンドアンビルセル
2つのダイヤモンドで試料を挟んで超高圧を発生させ、レーザーで加熱する装置。地球深部の高圧・高温環境を実験室で再現できる。
注6. X線回折
結晶にX線を当て、その回折パターンから結晶構造を調べる手法。本研究では、レーザー加熱と同期した高速測定により、加熱直後の相変化を捉えた。
注7. 沈み込んだ海洋プレート
海溝などで地球内部へ入り込んだ海洋プレート。海洋プレートの上部は海洋地殻で構成されており、長い時間をかけてマントル深部へ運ばれる。
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<研究内容・論文に関すること>
明治大学理工学部物理学科
新名 良介
京都大学 成長戦略本部 水素エネルギーマテリアル・次世代電池研究開発ユニット(OI-HAB)
河口 沙織
東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻
河合 研志
岡山大学 学術研究院先鋭研究領域(惑星物質研究所)
石井 貴之
<取材に関すること・その他>
明治大学経営企画部広報課
TEL:03-3296-4082
E-mail:koho
mics.meiji.ac.jp
東京大学 理学系研究科
E-mail:media.s
gs.mail.u-tokyo.ac.jp
岡山大学総務部広報課
E-mail:www-adm
adm.okayama-u.ac.jp
(SPring-8 / SACLAに関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター 利用推進部 普及情報課
TEL:0791-58-2785
E-mail:kouhou
spring8.or.jp
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中途半端な価数の新化合物の物性・構造を明らかに
~物質の電磁気的性質の理解に役立つ発見~
2026年6月4日
大阪公立大学
高輝度光科学研究センター
理化学研究所
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<概要> 論文情報 |
<ポイント>
①バリウム(Ba)以外の+2価の金属を用い、金属フラーレン化合物の構造と物性を調べた。
②フラーレンにドープ※2 できる金属元素のうち、原子の大きさが最も小さい希土類金属イッテルビウム(Yb)を用いることで、体積を小さくできた。また、その結晶構造の変化を観察することに成功した。
③物性については、超伝導は発現しなかったが、広い温度範囲で金属として振る舞うことが判明した。
<研究者コメント>
この論文は私が博士前期課程在籍中に自力で着想し、博士後期課程まで続けた研究成果の一部です。『この方法ならうまくいくだろう』と考えて、予想通りになった事・まったく予想しなかった事の両方が含まれる、研究の面白さが凝縮されたテーマでした。未発見の新物質を自力で合成する物質科学の醍醐味を成果として発表でき、大変うれしく思います。
<研究の背景>
60個以上の炭素原子が集まってできるフラーレンという分子は、ボール型の構造をしており、さまざまな性質があります。例えば、固体のフラーレンC60とアルカリ金属を高温で反応させると、結晶の間隙にアルカリ金属が入っていく現象であるドーピング※3やインターカレーション※4が起きます。このとき、アルカリ金属は電子を周りに渡しやすい性質になり、フラーレンは電子を受け取りやすい性質になるため、アルカリ金属からフラーレンに電子が移動します。これを電荷移動といい、アルカリ金属をたくさんドープすると、フラーレンが持つ電子の数も増えます。
このような金属とフラーレンの化合物は超伝導を示すなどの性質があります。ドーパント※5の大きさ・価数・数によって結晶構造と物性が劇的に変化することから、発見以来30年以上にわたり研究が続けられてきました。C60は12個まで電子を受け取ることができ、どの価数がどのような性質を示すのか、大まかには調べられてきましたが、組成式A5C60で表される物質が存在しないため、-5価状態のC60からなる金属フラーレン化合物はこれまでほとんど研究されてきませんでした。しかし、アルカリ土類金属のバリウム(Ba)と一緒にドープすることで、唯一Ba2AC60という物質のみ-5価状態を実現できていました。ただし、金属フラーレン化合物では、価数が同じでも結晶の体積が変わると物性も変化することが知られています。Ba2AC60は体積がアルカリ金属の大きさによってほとんど変化しないため、-5価状態のフラーレンの詳しい物性は明らかになっていませんでした。
<研究の内容>
本研究では、Ba以外の+2価の金属を用い-5価状態のC60からなる金属フラーレン化合物の構造および物性を調べました。フラーレンにドープできる金属元素は化学的性質から数種類に限られているため、その中で原子の大きさが最も小さい希土類金属イッテルビウム(Yb)をBaの代わりに用いることで体積の制御範囲を拡大できると考えました。その結果、体積を小さくするという目的が達成でき、同時に予想していなかった結晶構造の変化も観察されました。これは、大型放射光施設SPring-8※6のビームラインBL02B2における放射光粉末回折実験やOak Ridge National Laboratoryにおける中性子回折実験により、C60分子の五員環※7がYb原子の方を向いており、同時にC60分子が結晶軸から少し傾いた状態であることが明らかになりました。
また、SPring-8のビームラインBL12XUにおけるX線吸収分光法により、ドープしたYbの価数は室温でほぼ純粋な+2であることが明らかになりました。他の希土類フラーレン化合物においては+2.2程度の“中途半端な価数”を取ることが知られていることから、本結果は価数揺動※8の研究に重要な情報を与えます。
さらに、物性に関しては、超伝導は発現しませんでしたが、広い温度範囲で金属として振る舞うことを実験で確認しました。これは 電子間の強い反発が超伝導のカギとなる -3 価のフラーレン化合物とは異なる性質ですが、 伝導帯のバンド※9の幅Wと電子間の反発の強さUが同程度の強さであることが主な理由であることを、密度汎関数理論※10による計算と実験結果を照らし合わせることで明らかにしました。
<期待される効果・今後の展開>
本研究は、これまでに数例しか報告のない-5価状態の金属フラーレン化合物において、世界で初めて結晶格子体積を変化させることで、バンド構造の制御に成功し、また結晶構造と電子物性について詳細に明らかにしました。これらは、金属フラーレン化合物を含む、強相関電子系物質※11 の電気的・磁気的な振る舞いを理解するためのマイルストーンとして重要な情報を与え、将来的には超伝導物質の設計指針につながります。また、副次的な発見として、通常+3価であるYbイオンが、Yb2CsC60中でほぼ+2価となる物質であることが明らかになりました。さらに、炭素という地球上にありふれた元素で作る機能性材料としても将来的な応用が期待されます。
<資金情報>
本研究は、次世代研究者挑戦的研究プログラム事業(JPMJSP2139)、科学研究費補助金(JP21H01907、JP22K18693、JP23KJ1843)の支援を受けて実施しました。
【用語解説】
※1 フラーレン
建築家のバックミンスター・フラー(Buckminster Fuller)にちなみ名付けられた、球状の分子。サッカーボール型のC60のほか、C70やそれ以上の炭素数をもつ無数の高次フラーレンが存在する。
※2 ドープ
材料の性質を変化させる目的で、母材に対して少量の異種成分を添加すること。
※3 ドーピング
物質に別の元素や分子を添加すること。
※4 インターカレーション
ここでは、結晶中の分子の隙間に原子を挿入すること。
※5 ドーパント
ドープ(ドーピング)で添加する異種成分のこと。金属フラーレン化合物では、金属がこれに相当する。
※6 大型放射光施設SPring-8
理化学研究所が所有する兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す大型放射光施設で、利用者支援等は高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っている。SPring-8(スプリングエイト)の名前はSuper Photon ring-8 GeVに由来。SPring-8では、放射光を用いてナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われている。
※7 五員環
5つの原子が環状に結合した構造のこと。
※8 価数揺動
希土類などの一部の元素は、複数の価数状態が共存することがある。例えば、ある物質中で70%が+2価、30%が+3価で存在する場合、その元素の価数を平均して+2.3と表す。温度や圧力など、環境によって価数が変化すると物性も変化する。
※9 バンド
原子が集まって結晶を形成するとき、電子がとりうるエネルギー準位が帯(バンド)状に分布する構造のこと。
※10 密度汎関数理論
物質中の個々の電子の位置ではなく、密度を用いて計算する手法。
※11 強相関電子系物質
電子間の反発エネルギーの影響が物性に強く表れる物質群。液体窒素で冷やせる温度で超伝導体になる銅酸化物など、高温超伝導体の多くがこれに属する。
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【研究内容に関する問い合わせ先】
大阪公立大学大学院理学研究科
教授 久保田 佳基(くぼた よしき)
【報道に関する問い合わせ先】
大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list
ml.omu.ac.jp
理化学研究所 広報部 報道担当
TEL:050-3495-0247
E-mail:ex-press
ml.riken.jp
(SPring-8 / SACLAに関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター
利用推進部 普及情報課
TEL:0791-58-2785 PBX:050-3502-3763
E-mail:kouhou
spring8.or.jp
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“氷を制御するタンパク質”が乾燥から細胞を守ることを発見
線虫を用いて、生体保存技術への応用につながる新たな細胞保護機能を解明
2026年6月2日
茨城大学
高輝度光科学研究センター
東京大学大学院新領域創成科学研究科
北海道大学
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茨城大学学術研究院応用理工学野の倉持昌弘講師らの研究グループは、氷の成長を制御する「氷晶結合タンパク質」が、氷のない乾燥ストレス条件でも細胞を保護することを、線虫 C. elegans を用いて明らかにしました。本研究では、高活性氷晶結合タンパク質 TisIBP8 を発現する線虫が、乾燥処理後に野生型線虫より高い生存率を示すことを確認しました。また、筋細胞の損傷が抑えられること、さらに放射光赤外顕微分光を用いた解析からは乾燥に伴う細胞膜脂質構造の乱れが軽減されることを示しました。これらの成果は、氷晶結合タンパク質の機能が、従来知われていた凍結・低温保護にとどまらず、細胞膜の安定化を介した脱水ストレス保護にも広がる可能性を示すものです。将来的には、細胞、組織、生体試料の保存技術の高度化に貢献することが期待されます。この成果は、2026年5月21日付で「FEBS Open Bio」に掲載されました。
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■研究者の情報
下瀬 大輝 茨城大学大学院理工学研究科博士前期課程(研究当時)
尾崎 晃太郎 茨城大学大学院理工学研究科博士前期課程
栗山 稜平 茨城大学大学院理工学研究科博士前期課程(研究当時)
池本 夕佳 公益財団法人高輝度光科学研究センター 分光イメージング推進室 主席研究員
三尾 和弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所 先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ 単一状態計測チーム ラボチーム長(研究当時)
佐々木 裕次 東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授
新井 達也 北海道大学大学院先端生命科学研究院 助教
津田 栄 北海道大学大学院先端生命科学研究院 学術研究員
新海 陽一 国立研究開発法人産業技術総合研究所細胞分子工学研究部門細胞未病エンジニアリング研究グループ 研究グループ長
倉持 昌弘 茨城大学学術研究院応用理工学野 講師
■背景
氷晶結合タンパク質は、氷の表面に結合して氷結晶の成長や再結晶化を制御するタンパク質であり、魚類、昆虫、植物、菌類など、さまざまな生物で見つかっています。氷晶結合タンパク質はこれまで主に凍結環境で生物を保護する分子として研究されてきました。一方で近年では、この氷晶結合タンパク質が、氷の存在しない低温条件でも細胞を保護する可能性が報告されており、その作用には細胞膜の安定化が関係すると考えられています。細胞膜は、凍結、乾燥、浸透圧変化などのストレスによって構造が乱れやすく、細胞の生死に大きく関わる重要な構造です。そこで本研究では、氷晶結合タンパク質が、凍結だけでなく乾燥ストレスに対しても細胞を保護できるのではないかと考え、モデル生物である線虫Caenorhabditis elegansを用いて検証しました。
■研究手法・成果
研究グループは、高活性の菌類由来氷晶結合タンパク質 TisIBP8 を筋細胞で発現する線虫を用い、乾燥ストレス後の生存率、運動機能、筋細胞の損傷、細胞膜構造の変化を評価しました。乾燥処理後に水を加えて再水和し、生存率を調べたところ、TisIBP8 を発現する線虫では、野生型線虫と比べて生存率が有意に高くなりました。特に 20分および30分の乾燥処理で保護効果が認められました。一方で、40分の強い乾燥処理では両者とも生存が確認されず、TisIBP8 の効果は強い乾燥耐性を与えるものではなく、乾燥による細胞ダメージを部分的に軽減するものと考えられました。次に、筋細胞の細胞核を蛍光タンパク質で可視化して解析したところ、TisIBP8 を発現する線虫では、乾燥後も検出可能な筋細胞核がより多く保持されていました。これは、TisIBP8 が乾燥による筋細胞の構造的損傷を抑えることを示しています。さらに、大型放射光施設SPring-8 の BL43IR において、放射光赤外顕微分光を用いて線虫体内の膜脂質構造を解析しました。その結果、野生型線虫では細胞膜脂質に由来する赤外吸収スペクトルが乾燥後に大きく変化したのに対し、TisIBP8 発現線虫ではその変化が小さく抑えられていました。これにより、TisIBP8 が乾燥ストレス下で細胞膜構造を安定化している可能性が示されました。
■今後の展望
本研究により、氷晶結合タンパク質は氷結晶の成長を制御するだけでなく、細胞膜を安定化することで乾燥ストレスによる細胞損傷を軽減する可能性が示されました。凍結保存では、氷結晶による物理的損傷だけでなく、凍結に伴う水分移動や浸透圧変化によって細胞が脱水状態にさらされることも大きな問題です。そのため、本研究で明らかになった「膜安定化による脱水ストレス緩和」は、凍結保存の新しい理解にもつながる可能性があります。今後は、氷晶結合タンパク質がどのように細胞膜と相互作用するのかを分子レベルで明らかにするとともに、細胞、組織、臓器、微生物など、さまざまな生体試料の保存技術への応用可能性を検討していきます。
■研究助成等
本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 ACT-X(JPMJAX22B7)、日本学術振興会(JSPS)科研費(25K01630、25K22444、24K17826)の支援を受けたものです。
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<研究内容について>
茨城大学学術研究院応用理工学野 倉持昌弘
<報道関係のお問い合わせ>
茨城大学 広報・アウトリーチ支援室
TEL:029-228-8008 FAX:029-228-8019
E-mail:koho-prg
ml.ibaraki.ac.jp
東京大学大学院新領域創成科学研究科 広報室
TEL:04-7136-5450
E-mail:press
k.u-tokyo.ac.jp
北海道大学 社会共創部広報課
TEL:011-706-2610 FAX:011-706-2092
E-mail:jp-press
general.hokudai.ac.jp
(SPring-8 / SACLAに関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター
利用推進部 普及情報課
TEL:050-3502-3763
E-mail:kouhou
spring8.or.jp
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細胞1つの元素量を測る新手法、軟X線で実現
――海洋植物プランクトンに含まれる酸素量をピコグラムの精度で計測――
2026年6月3日
東京大学
名古屋大学
理化学研究所
高輝度光科学研究センター
発表のポイント
◆海洋植物プランクトン細胞1つに含まれる元素量を定量する計測手法を新開発の軟X線分光顕微鏡を用いて開発しました。
◆これまで測定が難しかった軽元素である酸素について、単一細胞レベルでの絶対質量測定をピコ(1兆分の1)グラムの精度で実現しました。
◆本手法は炭素や窒素など他の元素にも適用可能であり、細胞内元素分布や化学状態を可視化する新たな分析基盤として、生命科学を含む様々な物性研究への貢献が期待されます。
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東京大学物性研究所のJordan Tyler O’Neal特任研究員(研究当時)と木村隆志准教授、竹尾陽子助教、同大学大学院農学生命科学研究科の児玉武稔准教授、名古屋大学大学院工学研究科の松山智至教授、理化学研究所放射光科学研究センターの志村まり研究員、高輝度光科学研究センターの大橋治彦特任参事らによる研究グループは、軟X線スペクトロ・タイコグラフィ※1を用いて、海洋植物プランクトン1細胞に含まれる元素量を定量する新しい計測手法を開発しました。 |
発表内容
背景
生物の細胞は、炭素や窒素、酸素、鉄など多様な元素から成り立っています。これらの元素が細胞内のどこに、どれだけ存在するかを調べることは、細胞の機能や環境への応答を理解するために欠かせません。中でも、海洋の植物プランクトンは、地球全体の光合成の約半分を担う、地球規模の元素循環に関わる重要な生物です。しかし、個別のプランクトンに含まれる元素を直接かつ定量的に測定することは微小な試料サイズから難しく、特に軽元素の計測については様々な技術的な制約が存在していました。
研究内容
本研究グループは、この課題を解決するため、軟X線スペクトロ・タイコグラフィを用いた新たな元素定量法を開発しました。タイコグラフィは、試料にX線を照射して得られる回折パターンから画像を再構成する手法であり、従来の顕微鏡では実現困難な高い空間分解能と感度を両立できる点に特徴があります。軟X線スペクトロ・タイコグラフィでは、個別の元素に特異的に反応する軟X線の波長域をまたいで多数の画像を取得し、吸収像の変化から元素ごとの分布と質量を評価しました。
本研究では、海洋植物プランクトンである珪藻 Thalassiosira weissflogii※2(図2)を測定対象としました。兵庫県播磨の大型放射光施設「SPring-8」※3ビームラインBL07LSUにおいて軟X線スペクトロ・タイコグラフィ測定を行い、プランクトン細胞中の酸素の分布および量を評価したところ、細胞質と比較して珪藻の隔壁に特に高密度に酸素が分布をしていることが分かりました。また軟X線吸収率の変化から、それぞれの領域に含まれている酸素の量を17±2 ピコグラム、53±6 ピコグラム、50±5 ピコグラムと極めて高い精度で決定することができました。これらの計測結果は、ガラスのナノ粒子での計測(図3)や、金属元素に対して高い検出感度を持つ蛍光X線顕微鏡※4との比較により妥当性を検証しました。
今後の展望
本成果は、単一細胞を対象とした元素定量分析の新たな基盤技術を示すものです。細胞ごとの個性を統計的に調べることが可能になるため、植物プランクトンの生理状態、元素循環、環境変化への応答をより深く理解できるようになると期待されます。また軟X線スペクトロ・タイコグラフィでは、元素量に加えてその化学状態まで調べることができます。研究グループでは既に同手法により細胞内に含まれる元素ごとの化学状態を地図のように可視化することにも成功しています(関連情報②)。将来的には、特定の元素が細胞内でどの化合物や構造にどれだけ含まれ、どのように機能しているかを調べる研究へと発展させることが可能です。そのため、本技術は生命科学のみならず、軽元素から成る有機材料やデバイスの分析にも応用可能な基盤技術として、幅広い分野への波及が見込まれます。
〇関連情報:
プレスリリース①「高精度ミラーと計算を組み合わせた軟X線顕微鏡を開発 ―ラベルフリーで細胞内の微細構造を50 nmの分解能で可視化―」(2022/07/12)
https://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/news2.html?pid=16120
プレスリリース②「軟X線で細胞内の「化学地図」を描く――新開発の軟X線分光顕微鏡で窒素・酸素の化学状態を詳細に可視化することに成功――」(2025/02/14)
https://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/news2.html?pid=26275
発表者・研究者等情報
東京大学
物性研究所
Jordan Tyler O’Neal 特任研究員(研究当時、 現: 日本学術振興会外国人特別研究員)
木村 隆志 准教授 (兼:理化学研究所 放射光科学研究センター 客員研究員)
竹尾 陽子 助教 (兼:理化学研究所 放射光科学研究センター 客員研究員)
大学院農学生命科学研究科
児玉 武稔 准教授
名古屋大学
大学院工学研究科
松山 智至 教授
理化学研究所
放射光科学研究センター 生体機構研究グループ
志村 まり 研究員 (兼:国立健康危機管理研究機構 研究員)
高輝度光科学研究センター
ビームライン光学技術推進室
大橋 治彦 特任参事 (兼:理化学研究所 放射光科学研究センター 客員研究員)
研究助成
本研究は、科学技術振興機構(JST)の次世代研究者挑戦的研究プログラム(JPMJSP2108)、創発的研究支援事業(JPMJFR2469)、日本学術振興会 科学研究費助成事業(20H04451、23H01833、25KJ1045、25K03389、24K22349、23K26978、23K26526、23KF0019)、精密測定技術振興財団、アサヒグループ財団、文部科学省 「マテリアル先端リサーチインフラ」事業(JPMXP1223UT1093、JPMXP1224UT1025、JPMXP1225UT1159)の支援により実施されました。
【用語解説】
※1. 軟X線スペクトロ・タイコグラフィ
軟X線を試料に照射して得られる回折パターンから、計算機処理によって高分解能・高感度の試料の画像を再構成する顕微鏡法です。軟X線のエネルギーを元素に固有の吸収が起こる領域の前後で変化させて多数の画像を取得することで、試料内の元素分布や元素量を評価できます。本研究では、この手法を用いて、単一の海洋植物プランクトン細胞に含まれる酸素の分布と量を測定しました。
※2. 珪藻 Thalassiosira weissflogii
珪藻はガラスの主成分である二酸化ケイ素を含む殻を持つ単細胞性の植物プランクトンで、海洋に広く分布し、光合成を通じて炭素や栄養塩の循環に関わる重要な生物群です。 Thalassiosira weissflogii は海洋性の珪藻の一種で、植物プランクトンの生理や元素組成を調べる研究対象として用いられています。
※3. 大型放射光施設「SPring-8」
理化学研究所が所有する、兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す大型放射光施設で、利用者支援等は高輝度光科学研究センターが行っています。SPring-8(スプリングエイト)の名前はSuper Photon ring-8 GeVの略。放射光を用いてナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われています。
※4. 蛍光X線顕微鏡
試料にX線を照射したときに、元素から発生する固有の蛍光X線を検出することで、試料中の元素の種類や分布を調べる顕微鏡法。鉄などの金属元素に対して高い検出感度を持つ一方、酸素などの軽元素では蛍光信号が弱く、測定が難しい場合があります。本研究では、軟X線スペクトロ・タイコグラフィによる測定結果の妥当性を確認するための比較手法として用いました。
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本件に関するお問い合わせ先 |
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(研究内容について)
東京大学物性研究所 准教授 木村 隆志(きむら たかし)
(広報窓口)
東京大学物性研究所 広報室
TEL:04-7136-3207
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理化学研究所 広報部 報道担当
TEL:050-3495-0247
E-mail:ex-press
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名古屋大学 総務部広報課
TEL:052-558-9735
E-mail:nu_research
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(SPring-8 / SACLAに関すること)
高輝度光科学研究センター 利用推進部 普及情報課
TEL:0791-58-2785
E-mail:kouhou
spring8.or.jp
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- 投稿者: Super User
- カテゴリ: プレスリリース
- 参照数: 221
超高強度レーザーとXFEL で ナノ構造内部のプラズマを直接可視化
―ナノワイヤー中にエネルギーが閉じ込められる仕組みを超高速計測で解明—
2026年6月1日
大阪大学
公益財団法人高輝度光科学研究センター
【研究成果のポイント】
超高強度レーザーを照射したナノ構造材料※1 の内部で生じるプラズマ※2 が、狭い領域で効率よく 加熱される様子を、X 線自由電子レーザー(XFEL)※3 によって直接計測することで初めて実証。
非常に短い時間における変化で計測が極めて困難であったが、XFEL を用いることにより直接可視化することに成功。
レーザーエネルギーをナノ構造によって制御する考え方は、レーザー加工や先端材料開発など、より広い産業分野への波及も期待される。
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概要 |
この材料は、「非常に細かい毛のような構造が密集した材料」であり、レーザー光を内部に取り込みやすい特徴を持っています(図1)。そのため、通常の平らな材料よりも効率よくエネルギーを吸収できることから、高輝度 X 線源、粒子加速、核融合研究などへの応用が期待されています。しかし、その内部で起きる現象は、時間的にも空間的にも極めて小さいため、これまで直接観測することは困難でした。
本研究では、このナノワイヤーにレーザーを照射した直後の状態を、超高速で観測できる XFEL で時間ごとに追跡しました。その結果、レーザー照射直後にナノワイヤーが急激に加熱され、その後、ワイヤー構造の崩れに伴ってさらに温度が上昇することが明らかになりました。さらに、電子の動きが横方向に抑えられるため、エネルギーが外へ広がりにくく、内部に閉じ込められることも分かりました。
本成果は、レーザーと物質の相互作用の理解を大きく前進させるものであり、将来的な高効率エネル ギー利用技術やレーザー核融合研究への応用が期待されます。
本研究成果は Springer Nature が発刊する学術誌『Scientific Reports』に 2026 年 4 月 1 日 に掲載されました。
【重森教授のコメント】
ナノメートルという微細な空間、そしてピコ秒という極短時間に起こる現象を直接観測する困難かつチャレンジングな課題でした。
研究の背景
近年の超高強度レーザー技術の進展により、実験室で極めて高温・高密度の状態を作り出すことが可 能となり、核融合や宇宙物理、粒子加速などの研究が大きく進展しています。
その中で、微細な柱状構造を多数並べたナノワイヤーは、レーザー光を内部に閉じ込めやすく、従来の 平坦な材料に比べて高いエネルギー吸収効率を示すことが知られています。このため、強力な X 線発生や高エネルギー粒子生成などへの応用が期待されてきました。
一方で、このような材料の内部で、エネルギーがどのように吸収され、どのように広がっていくのかについては、これまで主に数値シミュレーションや間接的な計測に頼っていました。ナノ構造の内部で起きる現象は、時間スケールではピコ秒以下、空間スケールではマイクロメートル以下と極めて小さいため、従来の計測手法では直接見ることが難しかったからです。
この課題を解決するために、本研究グループは、超高速・高輝度の X 線を発生できる XFEL を用い、レーザー照射直後のナノワイヤー内部の状態を直接観測することに取り組みました。
研究の内容
本研究では、高強度レーザーを照射した微細構造材料の内部を、XFEL を用いたポンプ・プローブ計測※4 によって観測しました。特に、ナノワイヤーの部分とその下にある基板部分を異なる材料で作製することにより、XFEL のエネルギーを調整して、それぞれの領域の状態を分けて観測できるようにしました。これにより、材料内部のどこで、いつ、どのようにエネルギーが蓄えられ、移動するかを詳しく調べることが可能になりました。その結果、次のような重要な知見が得られました(図2)。
まず、レーザー照射直後に微細構造内部が急速に加熱され、電子温度※5 はおよそ 120 eV に達することが分かりました。さらに、およそ 10 ピコ秒後(1000 億分の 1 秒後)には、構造そのものの崩れに伴 って電子温度が約 140 eV まで上昇することが明らかになりました。これは、最初のレーザー加熱だけでなく、構造変化そのものが追加の加熱に寄与していることを示しています。
また、エネルギーが横方向にあまり広がらないことも観測されました。これは、微細な柱状構造のすき間と、その周囲に形成される磁場の影響によって、電子の横方向の移動が抑えられているためだと考えられます。その結果、エネルギーが局所的に閉じ込められ、高温状態が保たれやすくなっていることが分かりました。さらに、ナノワイヤーの部分で発生した高エネルギー電子が、その下の基板部分に到達するまでの時間が、およそ 0.2 ピコ秒であることも明らかになりました。
(a)巨視的な概念図と(b)ナノワイヤー1 本に着目した加熱プロセスの 概念図
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
本研究成果は、ナノ構造を利用した高効率なエネルギー吸収および輸送制御に関する重要な知見を提供するものです。特に、レーザーエネルギーを効率よく高温状態へ変換し、そのエネルギーを局所に保つことができるという知見は、将来的な高輝度 X 線源の開発、レーザー駆動粒子加速、小型化された核融合技術などにおいて、材料設計の新しい指針になると期待されます。また、エネルギーの流れをナノ構造によって制御する考え方は、レーザー加工や先端材料開発など、より広い産業分野への波及も期待されます。
本研究で用いた XFEL による超高速観測手法は、今回の材料に限らず、さまざまな微細構造材料や極限状態物質の研究にも応用可能であり、今後の高エネルギー密度※6 科学の発展に貢献する重要な計測技術になると考えられます。
特記事項
なお、本研究は、 Japan Synchrotron Radiation Research Institute(JASRI)の承認課題、Institute of Laser Engineering(大阪大学レーザー科学研究所)の共同研究課題、日本学術振興会・科学研究費補助金、SACLA 大学院生研究支援プログラム、米国National Science Foundation、およびJST SPRINGの支援のもと実施されました。
参考URL
重森 啓介 教授 研究者総覧URL
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/d89d32580e19c3b8.html
【用語解説】
※1. ナノ構造材料
ナノワイヤ構造。ナノメートルサイズの細い柱状構造が多数並んだ材料。レーザー光を内部に取り込みやすい特徴を持つ。
※2. プラズマ
物質が高温になり、原子から電子が離れて自由に動けるようになった状態。雷や太陽の内部でも見られる。
※3. X 線自由電子レーザー(XFEL)
非常に短い時間だけ発光する強力な X 線を発生する装置。極めて速く起こる現象を高い時間分解能で観測できる。
※4. ポンプ・プローブ計測
一つの光で物質に変化を起こし、その直後の状態を別の光で観測する方法。超高速現象の時間変化を追跡できる。
※5. 電子温度
プラズマ中の電子がどれくらい高いエネルギーを持っているかを表す指標。1eV(電子ボルト)は 1 万 度に相当する。
※6. 高エネルギー密度
非常に高い温度・圧力・密度を持つ物質状態。核融合や惑星内部、宇宙現象などの研究に関係する。
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本件に関するお問い合わせ先 |
本件に関するお問い合わせ先
<研究に関するお問い合わせ>
大阪大学 レーザー科学研究所 教授 重森 啓介(しげもり けいすけ)
<レーザー科学研究所の広報に関するお問い合わせ>
大阪大学 レーザー科学研究所 広報戦略室
TEL:06-6879-8701
E-mail:kouhou.ile
office.osaka-u.ac.jp
(SPring-8 / SACLAに関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI) 利用推進部 普及情報課
TEL:050-3502-3763
E-mail:kouhou
spring8.or.jp