放射光(X線)で小さなものを観察する大きな2つの施設

絶縁体の正体を暴く!
〜 磁気秩序の“指紋”を量子ビームで可視化 〜


2025年5月12日
甲南大学
大阪公立大学
大阪大学
理化学研究所
立命館大学
摂南大学
日本大学


研究成果のポイント

●光電子分光実験により、モット型・スレーター型絶縁体の識別を初めて実証:光電子分光※1スペクトルに現れる特徴的な構造の変化から、反強磁性絶縁体がモット型かスレーター型※2かを区別する新手法を確立しました。
●理論計算により非局所的応答の起源を解明し、実験を再現:LDA+DMFT法※3を用いたシミュレーションにより、光電子放出時に起こる非局所的スクリーン効果の違いが、磁気秩序のタイプと対応することを理論的に明らかにしました。
●量子材料や省エネデバイス開発への応用に期待:絶縁体の性質を正確に見分けられる本手法は、スピントロニクスや量子情報処理に必要な機能性材料の探索・設計に役立つと期待されます。


甲南大学理工学部物理学科 山﨑篤志教授の研究グループは、大阪公立大学大学院工学研究科 播木敦准教授、大阪大学大学院基礎工学研究科 関山明教授、同大学 藤原秀紀助教、理化学研究所 放射光科学研究センター 玉作賢治チームリーダー、同研究所 濱本諭特別研究員、立命館大学 今田真教授、摂南大学 東谷篤志教授、日本大学 高瀬浩一教授、マサリク大学 Jan Kuneš教授などとの共同研究で、大型放射光施設SPring-8※4のビームラインBL19LXUにて量子ビーム※5の一種である放射光を利用した硬X線光電子分光(HAXPES)実験を行い、最新の電子構造計算手法(LDA+DMFT法)を組み合わせることで、物質が「モット型」か「スレーター型」か、という絶縁機構の違いを区別することに初めて成功しました。
モット型は電子同士の強い反発により絶縁化し、スレーター型は磁気秩序によってバンド構造が変化し絶縁性を示します(図1)。この違いは、次世代の低消費電力・高速動作を目指す電子デバイスや量子材料の設計において本質的な情報となります。また、今回の研究では、光電子分光という局所的な手法でありながら、非局所的なスピン相関や磁気秩序の情報を抽出できることを理論的・実験的に実証し、これまで困難だった量子材料の内部状態の診断に新しい道を拓きました。将来的には、高性能メモリ材料や量子コンピューティング素子の開発に寄与し、より快適で持続可能な社会の実現に貢献することが期待されます。

論文情報
雑誌名: Physical Review B
題名 :Fingerprints of Mott and Slater gaps in the core-level photoemission spectra of antiferromagnetic iridates
著者:K. Nakagawa、 A. Hariki、 T. Okauchi、 H. Fujiwara、 K.-H. Ahn、 Y. Murakami、 S. Hamamoto、 Y. Kanai-Nakata、 T. Kadono、 A. Higashiya、 K. Tamasaku、 M. Yabashi、 T. Ishikawa、 A. Sekiyama、 S. Imada、 J. Kuneš、 K. Takase、 and A. Yamasaki
DOI:10.1103/PhysRevB.111.195114


【研究の背景】

遷移金属酸化物において絶縁性が現れるメカニズムには、電子間の強い相互作用による「モット機構」と、磁気秩序によってバンド構造が変化する「スレーター機構」が知られています。しかし、実際の物質においてこれらを実験的に区別することは難しく、広く普及している価電子帯光電子分光法では解明が困難でした(図2)。本研究では、互いに似た構造を持つSr2IrO4と Sr3Ir2O7という2種類のイリジウム(Ir)酸化物をモデル物質として、内殻光電子分光実験を行い、スペクトルの温度変化を理論計算(LDA+DMFT)に基づき詳細に解析することで、スペクトル形状の変化がモット型かスレーター型かの“指紋”を持つことを明らかにしました(図3)。ここで“指紋”とは、非局所的な電荷応答(nonlocal screening)に由来するスペクトルの変化を意味します。これにより、これまで難しかった磁気秩序と絶縁化の起源の識別が可能になりました。



図1.スレーター絶縁体とモット絶縁体の概念図。図では、物質中の無数の価電子を水で表現し、電気伝導を担う電子を白い球で表しています。また、電子が収容されるエネルギーバンドを容器で表現しています。通常の金属(中央)では、バンドが途中まで電子で満たされているために電子が移動することができ、電流が流れます。一方、スレーター絶縁体(左)では、磁気秩序によりバンド構造が変化して電子によって完全に満たされたバンドと空になったバンドに分かれるため、移動できる電子がなくなります。モット絶縁体(右)では、電子間の反発によって電子はその場にとどまって動けなくなります。



図2.(上)モット絶縁体とスレーター絶縁体での電気的・磁気的性質とその温度変化。実験を行った2つの温度のうち高温側では、2つの物質の電気的性質が異なります。(左下・右下)電気的性質を調べる従来の手法である価電子帯光電子分光の結果。電気的性質の変化は結合エネルギーがゼロでの強度の変化として観測されることが期待されますが、Sr2IrO4とSr3Ir2O7では温度の変化に対してスペクトルの変化がほとんど見られない(左下)か、温度上昇による外因的な影響に覆い隠されてしまい(右下)、これらの物質がモット型かスレーター型かを判断することは困難でした。



図3.(上)光電子分光実験の模式図と(下)重要な結果である2つのイリジウム酸化物(Sr2IrO4と Sr3Ir2O7)が常磁性を示す300K(摂氏27度)と反強磁性を示す100K(摂氏マイナス173度)での光電子スペクトル、および、その差分スペクトル。モット絶縁体であるSr2IrO4では肩構造A付近での差分スペクトル強度(緑線)が負であるのに対して、スレーター絶縁体であるSr3Ir2O7では正になっており、明確に区別することができます。


【共同研究における各研究機関の役割】

甲南大学:硬X線光電子分光実験、データ解析、論文執筆(責任著者)
大阪公立大学:高精度電子構造計算コード開発および同計算実施、論文執筆
大阪大学、立命館大学、摂南大学:硬X線光電子分光実験手法開発および同実験実施
理化学研究所:高輝度X線ビームラインおよびX線光学系開発
日本大学:高純度単結晶試料の作製および評価


【用語解説】


※1. 光電子分光
光電子分光は、アインシュタインが提唱した光量子仮説に基づく「外部光電効果」を利用した分析手法です。物質にX線などの光を照射すると、内部の電子が外へ飛び出します。その電子のエネルギーを測定することで、物質内部の電子状態や元素の化学的な環境を詳細に調べることができます。この手法は、物質科学や材料開発の分野で広く活用されており、近年では産業応用にも急速に広がりを見せています。本研究では、より深い領域の情報を得るため、通常より高いエネルギーを持つ「硬X線」を用いて測定が行われました。


※2. モット絶縁体とスレーター絶縁体
通常、電子が自由に動ける金属に対し、電子の動きが制限されて電気が流れなくなる物質を「絶縁体」と呼びます。絶縁性をもたらす仕組みにはさまざまなものがありますが、特に磁性を伴う絶縁体では、その起源に応じて「モット型」と「スレーター型」に分類されます。モット型は電子間の強い反発によって、スレーター型は磁気秩序によるバンド構造の変化によって、それぞれ電子の移動が阻まれます。両者は見かけ上は似ていますが、絶縁性の根本的な原因が異なります。材料の設計や新技術の応用においては、この違いを見分けることが極めて重要です。


※3. LDA+DMFT法
LDA+DMFT法は、物質中の電子のふるまいを原子レベルで精密に再現するための先端的な理論計算手法です。まず「LDA(局所密度近似)」という方法で電子の平均的な分布を計算し、そこに「DMFT(動的平均場理論)」を組み合わせることで、時間的に変化する電子間の複雑な相互作用まで扱うことができます。特に、金属と絶縁体の間で揺れ動くような“強相関電子系”と呼ばれる難解な物質の理解に極めて有効です。本研究では、この手法を用いたシミュレーションにより実験データを再現し、絶縁状態の違い(モット型かスレーター型か)をミクロな視点から理論的に明らかにしました。


※4. 大型放射光施設 SPring-8
SPring-8は、兵庫県播磨科学公園都市にある理化学研究所の大型放射光施設です。世界最高性能の放射光を生み出すことができ、固体物理、素粒子実験等の基礎科学研究からバイオ、ナノテクノロジーといった応用研究にまで幅広い研究が行われています。


※5. 量子ビーム
光子、中性子、電子、イオンなどを同じ向きに細く絞ってビーム状に打ち出したものの総称です。色々なものに照射することで、原子や分子のような極微のスケールで様々なものを調べたり、作ったりすることができる最先端の技術です。SPring-8では、量子ビームの中でも非常に強度の強い光子ビーム(放射光)を使って様々な実験を行うことができます。光子ビームのエネルギーによって、紫外線やX線、ガンマ線など異なる名称で呼ばれます。


本件に関するお問い合わせ先
(研究内容に関する問い合わせ先)
甲南大学理工学部物理学科 教授 山﨑篤志

(発表機関連絡先)
甲南大学 (学校法人甲南学園 広報部)
TEL:078-435-2314
E-mail: kouhouadm.konan-u.ac.jp

大阪公立大学 広報課
TEL:06-6967-1834
E-mail: koho-listml.omu.ac.jp

大阪大学基礎工学研究科 庶務係
TEL:06-6850-6131
E-mail: ki-syomuoffice.osaka-u.ac.jp

理化学研究所 広報部 報道担当
TEL:050-3495-0247
E-mail: ex-pressml.riken.jp

立命館大学 広報課
TEL:075-813-8300
E-mail: r-kohost.ritsumei.ac.jp

摂南大学 (学校法人常翔学園 広報室 担当:石村、上田)
TEL:06-6954-4026
E-mail: Kohojosho.ac.jp

日本大学理工学部 庶務課
TEL: 03-3259-0514
E-mail: cst.kohonihon-u.ac.jp

(SPring-8 / SACLAに関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター
 利用推進部 普及情報課
TEL:0791-58-2785 FAX:0791-58-2786
E-mail:kouhou@spring8.or.jp

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地球マントルの謎の溶融層の形成メカニズムを解明 


2025年5月8日
岡山大学
高輝度光科学研究センター


◆発表のポイント

・地球のマントルには410 kmの深さにある不連続面上に2重の低速度層がしばしば観察されますがその成因は謎でした。
・高圧下でマントルを構成するケイ酸塩物質に水を加えたものを溶かして重い球を落下させることで溶融物の粘性を決定したところ、異常に粘性が低いことが分かりました。
・モデル計算から、上昇するマントル対流の部分で水を含む溶融物が存在する場合に2重の低速度層を再現できることが分かりました。


岡山大学学術研究院先鋭研究領域・惑星物質研究所の芳野 極教授が参加する、日英仏米の国際的な科学者チームが、地球マントル深部に存在する謎めいた溶融層の成因を調査しました。Nature Communications誌(2025年4月4日)に掲載されたこの研究は、高圧科学技術先端研究センター(HPSTAR)とユニバーシティ・カレッジ・ロンドンに所属する岡山大学出身のロンジャン・シェ博士が主導しました。地球深部の水を含むケイ酸塩メルトの粘性測定から「メルト・ダブレット」と呼ばれる、地球の410 kmのマントル不連続面より上に位置する一対の溶融岩石層の形成過程を解明しました。岡山大学の高圧実験技術とSPring-8の強い放射光を用いて高温高圧下の含水ケイ酸塩溶融物(メルト)の粘性を測定し、モデル計算により、地球深部における溶融挙動がマントルのダイナミクスや水循環に及ぼす影響に関する謎を解き明かしました。この研究によりマントルの対流や化学進化への理解が進むことが期待されます。

論文情報
雑誌名: Nature Communications
題名 :Low melt viscosity enables melt doublets above the 410-km discontinuity
著者:Longjian Xie, Denis Andrault, Takashi Yoshino(芳野 極), Cunrui Han, James O. S. Hammond, Fang Xu, Bin Zhao, Oliver T. Lord, Yingwei Fei, Simon Falvard, Sho Kakizawa(柿澤 翔), Noriyoshi Tsujino(辻野 典秀), Yuji Higo(肥後 祐司), Laura Henry, Nicolas Guignot & David P. Dobson
DOI:10.1038/s41467-025-58518-7


芳野教授

岡山大学惑星物質研究所で博士の学位を取得した学生との共同研究からこの成果を得ることができました。SPring-8の高輝度放射光と惑星物質研究所の高圧発生技術によって、地球深部の高温高圧状態の物質をその場で観察することができます。研究者を目指す若者が減っていますが、ワクワクドキドキするような体験を我々と一緒にしてみませんか?


■発表内容

<現状>
地震探査により、マントル内でカンラン石から高圧相のワズレアイトへの遷移が起きる410km地震波不連続面(1)の直上に低速度層が検出されています。これらの低速度層は、多くの場合、含水ケイ酸塩メルトに起因すると考えられており、厚さは30~100 kmとさまざまで、時には二重層として現れることがあります。これまでのモデルでは、高密度の溶融物が不連続面上に蓄積されることが示唆されていましたが、観測された二重の低速度層を説明することはできませんでした(図1b)。


<研究成果の内容>
研究チームは、大型放射光施設SPring-8(2)(BL04B1)において高圧実験を実施し、410 km不連続面近傍の温度圧力環境を再現し、含水ケイ酸塩溶融体の粘性(3)を測定しました。その結果、含水率の増加に伴い粘性が劇的に低下することが分かりました(図1a)。これらの含水メルトの非常に低い粘性は、マントル中を高速に移動することを可能にします。1次元シミュレーションによって、上昇するマントルにおける含水ワズレアイトの継続的な脱水溶融によって二層のメルト層が形成されることを明らかにしました(図1b)。興味深いことに、これらの層は、局所的な条件、特に密度差やプルーム(4)の上昇する速度に応じて、単一の厚い層に融合することも、明確な二重層のまま残ることもあります。この挙動は、アラビア半島南部のアファー地域のマントルプルームシステムで観測される、単一の溶融層から分離された二重層への遷移を完璧に説明することができます。


<社会的な意義>
地球深部のマントルにおける溶融体の移動過程の解明は、火山システム、地表と内部間の深層水循環、そして惑星進化に関する理解に革命をもたらす可能性のある重要な知見を提供します。この研究成果は、地質災害の予測から新たな鉱物資源の発見に至るまで、幅広い応用が期待される、地球深部プロセスの次世代モデル開発の基盤となります。この画期的な成果は、地球のダイナミックな内部構造に関する将来の研究に刺激的な道を開くものです。



図1 低粘性により410 km不連続面より上において2重溶融層の形成が可能になることを示す模式図。(a) マントル溶融物の粘性に対する水の影響。(b) アファープルーム領域で観測された溶融層分布。Thompson et al. (2015) から改変。

■研究資金

本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(基盤S・21H04996研究代表:芳野極)、RCUK grants(NE/X009807, NE/T006617研究代表:David Dobson)の支援を受けて実施しました。また、本研究はSPring-8の課題番号2023A1109, 2024A1175で実施しました。ダイヤモンドシーリング技術は、フランスのソレイユにあるプシシェで、課題番号20230084、20220234、20211568、および20201203の支援を受けて開発されました。回収されたサンプルのトモグラフィーは、ClerVolcの2024年度ビジタープログラム(課題番号686)の支援を受けて実施されました。ダイヤモンドカプセルの製造は、英国王立協会の大学研究フェローシップ(UF150057)の形で部分的に支援されました。ビームタイムの実験準備は、岡山大学惑星物質研究所(IPM)の2023年度共同利用・共同研究拠点の支援を受けて行われました。


【補足・用語説明】


※1. 410km不連続面
地球内部の上部マントルと遷移層の境界で、深さ約410kmに存在し、主にかんらん石(オリビン)が高圧でワズレアイトへ相転移するため、地震波の速度が急に変わる不連続面で、地球内部の構造理解や、マントル物質の挙動を調べる上で重要な層です。


※2. 大型放射光施設 SPring-8
理化学研究所が所有する兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す大型放射光施設で、利用者支援等は高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っています。SPring-8(スプリングエイト)の名前はSuper Photon ring-8 GeVに由来。SPring-8では、放射光を用いてナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われています。


※3. 粘性
物質が流れにくさを示す性質で低粘性は流れやすいことを意味し、マントル対流や地震波の伝播、地球の熱輸送などに影響します。


※4. プルーム
マントル深部から上昇する熱くて軽い物質の柱状構造で、地表に到達すると火山活動を引き起こすことがあり、ハワイやアイスランドのプルームなどが代表例です。


本件に関するお問い合わせ先
<お問い合わせ>
岡山大学 学術研究院先鋭研究領域
教授 芳野 極

高輝度光科学研究センター 回折・散乱推進室
主幹研究員 肥後 祐司

(SPring-8 / SACLAに関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター
 利用推進部 普及情報課
TEL:0791-58-2785 FAX:0791-58-2786
E-mail:kouhou@spring8.or.jp

本件に関するお問い合わせ先
<お問い合わせ>
岡山大学 学術研究院先鋭研究領域
教授 芳野 極

高輝度光科学研究センター 回折・散乱推進室
主幹研究員 肥後 祐司

(SPring-8 / SACLAに関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター
 利用推進部 普及情報課
TEL:0791-58-2785 FAX:0791-58-2786
E-mail:kouhou@spring8.or.jp

地球中心を超える圧力領域まで9つの物質の圧縮挙動を決定
~巨大惑星深部科学・物性科学の発展へ貢献~


2025年4月17日
愛媛大学
高輝度光科学研究センター
大阪大学
大阪公立大学


【研究成果のポイント】

●特殊な先端形状の高圧発生装置を独自に開発し、地球中心圧力(365万気圧)を大きく超える430万気圧までの高圧実験を実現
●9つの物質について相互に整合的な状態方程式(“圧力計”に相当)を決定
●数百万気圧の圧力領域において、どの物質を圧力標準物質として使うかによって生じていた既存の圧力値推定の矛盾を解消し、より信頼性の高い”圧力計”を提案
●地球中心圧力を超える圧力領域での、巨大惑星深部研究から超伝導研究まで幅広い科学分野の進展に寄与



愛愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センターの境毅准教授と出倉春彦講師、石松直樹教授、高輝度光科学研究センターの門林宏和研究員、河口沙織主幹研究員、関澤央輝主幹研究員、新田清文研究員、大阪大学大学院基礎工学研究科附属極限科学センターの中本有紀助教、清水克哉教授、大阪公立大学の瀬戸雄介准教授からなる研究チームは、9つの物質(鉄、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、白金、金、酸化マグネシウム、塩化ナトリウム)について、地球中心圧力を超える最大430万気圧までの圧力と体積の関係(状態方程式)を決定することに成功しました。状態方程式は高圧実験において“圧力計”として用いられますが、本研究でこれら9つの物質の状態方程式が相互に矛盾なく整合的となったため、数百万気圧の極高圧実験においてどの物質を“圧力計”として使うかによって生じていた圧力値の矛盾が解消されました。
本研究の結果は地球中心圧力を超える極高圧領域に適用可能な“圧力計”を提供します。これにより、天王星や木星、あるいはスーパーアースのような系外惑星といった地球よりも大きな惑星の深部に対応するような圧力をより正確に見積もることが可能になり、今後の惑星深部研究に役立ちます。また惑星科学に限らず、超伝導研究に代表される高圧物質科学分野にも広く用いられることが期待されます。本研究成果は、英国の科学雑誌「Communications Materials」に4月17日に掲載されました。

論文情報
雑誌名: Communications Materials
題名 :The equations of state of nine materials up to 0.43 TPa for extreme pressure science
著者:Takeshi SAKAI, Hirokazu KADOBAYASHI, Yuki NAKAMOTO, Haruhiko DEKURA, Naoki ISHIMATSU, Saori KAWAGUCHI-IMADA, Yusuke SETO, Oki SEKIZAWA, Kiyofumi NITTA, Katsuya SHIMIZU
DOI:10.1038/s43246-025-00792-5


【詳細】

地球に限らず惑星の内部は高圧力状態にあります。中心に近い惑星深部ほど高い圧力になり、地球の中心圧力は365万気圧に達します。一方、木星のようなガス惑星や天王星のような氷惑星、あるいはスーパーアースと呼ばれる岩石型の系外惑星(※1)など地球の何倍もの質量をもつ惑星深部は、地球の中心圧力を大きく超える圧力の世界が広がっています。物質に圧力をかけると単純に縮んでいくだけではなく、元素の並び方(結晶構造)や物理的性質が大きく変化します。高圧実験を行って惑星深部の環境を実験室に再現することで、惑星の内部で何が起こっているのかを調べることができますが、惑星のより深い部分を調べるにはより高い圧力を発生させる必要があります。
静的圧縮(※2)による高圧実験装置としてはダイヤモンドアンビルセル(※3)図1)が広く利用されています。しかし一般的なダイヤモンドアンビルセルによる発生圧力は300万気圧程度が限界であり、さらなる高圧力の発生には技術開発が必要でした。

また、静的圧縮実験においてどの程度の圧力が達成できているかを決定するには、圧力標準物質の状態方程式(※4)を用いますが、実験例の極めて少ない数百万気圧領域ではほとんどの物質の状態方程式が十分に分かっていませんでした。このため、どの圧力標準物質を選択したかで結果が異なり、圧力標準物質の相互の整合性がない、といった難しい問題がありました。

本研究では、この2つの問題を解決するために特殊な先端形状を持つダイヤモンドアンビルを用いて地球中心圧力を超える静的圧縮実験を可能にし、9つの物質について300~400万気圧領域での状態方程式を決定しました。図1(下)は、愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター設置の集束イオンビーム加工装置(FIB)(※5)でダイヤモンドを加工して作製された特殊な先端形状の一例で、試料を加圧する微小な突起上の構造があることが特徴です。先端の平坦部分はわずか20 マイクロメートルで、この微小な先端形状が圧子となり、400万気圧を超える圧力発生が可能となりました。また、加圧される試料もFIBで数マイクロメートル程度の円盤状に微細加工されており、さらに本研究では圧力標準物質となる複数の試料を同時に充填しています(図2)。加圧された試料は大型放射光施設SPring-8(※6)のビームラインBL10XUおよびBL37XUにおいて粉末X線回折測定(図3)を行い、格子体積を決定しました。様々な試料の組み合わせで圧縮実験を繰り返すことで、9つの物質の体積-体積関係を明らかにしました(図4)。この体積-体積関係は、圧力の絶対値とは別に、ある物質Aがある体積まで圧縮されているときに、同じ状態にある別の物質Bの体積はどの程度まで圧縮されているか、という相互の関係を示すものです。これによって、既存の圧力標準物質による“圧力計”が相互に整合的であるかどうかの判断が可能になります。その一例として、動的圧縮実験(※7)において最近提案されていた銅、鉄、白金、金についての状態方程式(=圧力計)が、銅、鉄、金の3つは誤差の範囲内で整合的ですが、白金は400~500万気圧の圧力領域において約7%程度の大きい圧力を与えていたことが明らかとなりました。

また、銅の状態方程式を基準として、9つの物質で相互に整合的な状態方程式を決定しました(図4)。これらの9つの状態方程式すなわち圧力計は、本研究の高圧実験の測定結果により校正されているため、地球中心圧力を超える400万気圧の圧力領域において圧力値の矛盾が解消されています。また、この実験で求めたレニウムの状態方程式は第一原理計算(※8)による結果と良い一致を示すことが確認され、より信頼性の高い圧力計として提案されています。
今回得られた結果は地球中心圧力を超える圧力領域での高圧実験において「今どれだけの圧力が発生できているのか?」という疑問に答えるものであり、研究を行う上での重要な基盤となります。今後、この実験・測定技術を惑星構成物質に適用することで、より詳細な惑星深部構造の議論が可能になると期待されます。愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センターでは2024年度より超高圧科学部門を立ち上げ分野横断的な研究を推進することを目的として活動しています。本研究が対象とした数百万気圧の圧力領域は、高圧超伝導研究においても様々な物質が超伝導状態を発現する重要なフロンティアとなっています。今回の成果は、巨大惑星深部科学に限らず、高圧下における超伝導研究や電子物性研究といった物性物理学分野においても活用されることが期待され、重要な情報および実験技術を提供するものです。



図1.(上)ダイヤモンドアンビルセル。写真は試料設置前の上下のダイヤモンドのみの状態を横から見たもの。(下)集束イオンビーム加工装置(FIB)で加工したダイヤモンドアンビルの先端の電子顕微鏡写真。中央凸部の先端の平らな部分(キュレット部)のサイズは20 μm(マイクロメートル)になっている。(1マイクロメートルは1ミリメートルの1/1000)



図2.(上)レニウムガスケットに開けた試料室の穴に試料を充てんする直前の電子顕微鏡写真。(下)試料部分の断面模式図。この実験ではマグネシウムケイ酸塩(MgSiO3)ガラスに埋め込んだ銅とレニウムを試料室穴に挿入した後、隙間を埋めるようにグリセリンを充填した。



図3.430万気圧における銅とレニウムのX線回折パターン。
*印は試料の周囲にあるレニウムガスケットからの回折線。



図4.(左)9つの物質の圧縮曲線(=状態方程式)。(右)銅の体積比に対するそれぞれの物質の体積比。体積比は大気圧での体積に対する比率。それぞれの曲線上の白抜きの丸は本研究における最高圧力でのデータ点を示す(銅と金を除く)。
※塩化ナトリウムは32万気圧で結晶構造が変化するため、高圧相であるB2相について示してある。曲線が途中からなのは大気圧における仮想的な体積(実際には低圧相に戻ってしまうため存在しない)に対する比となっているため。

【研究サポート】

日本学術振興会科学研究費補助金
課題番号:17H02985, 21K18155,20H05644


【用語解説】


※1. 系外惑星
太陽系の外で発見された惑星。5000個以上の惑星が発見されている。特に、地球の数倍から10倍程度の質量をもつ惑星はスーパーアースとよばれている。特に恒星からの距離が程よい位置にあり液体の水を保持できると推定される惑星はハビタブル(居住可能)惑星とよばれ、生命が存在する可能性があることから広く注目を集めている。


※2. 静的圧縮
油圧やバネの力、またはガス圧などを利用してゆっくりと試料を加圧し、発生した圧力を保持したままにできるため、様々な分析を行うには有利な高圧力発生方法。この方式の高圧実験装置として、川井型マルチアンビル装置やダイヤモンドアンビルセルなどがある。


※3. ダイヤモンドアンビルセル
上下一対のダイヤモンドで試料を挟み込み高圧を発生する装置。試料を加圧するダイヤモンド先端の平らな部分をキュレットと呼び、キュレット径を選択することで数十万気圧から数百万気圧の高圧実験が可能だが、従来型ではおよそ300万気圧程度が限界。透明なダイヤモンドを通して試料の様子が観察でき、各種光学測定も可能である点が特徴。


※4. 状態方程式
圧力と体積の関係を表した数式。ここでは温度一定かつ固体の場合について取り扱っている。


※5. 集束イオンビーム加工装置(FIB)
ガリウムイオンを電場で加速して試料に衝突させることで極めて微小な加工を行うことができる装置。マイクロメートル(μm)~100ナノメートル(nm)サイズの加工を行うことができる。1マイクロメートルは1ミリメートルの1/1000、さらに、1ナノメートルは1マイクロメートルの1/1000。


※6. 大型放射光施設SPring-8
理化学研究所が所有する兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す大型放射光施設で、利用者支援等は高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っている。SPring-8(スプリングエイト)の名前はSuper Photon ring-8GeVに由来。SPring-8では、放射光を用いてナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われている。


※7. 動的圧縮実験
軽ガス銃を用いた衝撃圧縮実験や高強度レーザーを用いたレーザーショック実験などに代表される高圧発生方法。条件次第で1000万気圧以上の圧力を発生させることが可能だが、その超高圧力が発生する時間はわずかナノ秒であり静的圧縮実験に比べ、物性の精密測定が困難。


※8. 第一原理計算
量子力学および統計力学に基づき、物質の圧縮特性を含む多様な性質を非経験的に予測する理論計算手法。実験研究と相補的に用いることで、物性の理解をより深める一助となる。


本件に関するお問い合わせ先
(研究に関すること)
愛媛大学先端研究院 地球深部ダイナミクス研究センター
准教授 境 毅

(プレスリリースに関すること)
愛媛大学
総務部広報課
電話:089-927-9022 、E-mail: kohostu.ehime-u.ac.jp
先端研究院 地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)
電話:089-927-8165、E-mail: grcstu.ehime-u.ac.jp

高輝度光科学研究センター(JASRI)利用推進部 普及情報課
電話:0791-58-2785、E-mail: kouhou@spring8.or.jp

大阪大学 基礎工学研究科庶務係
電話:06-6850-6131、E-mail:ki-syomuoffice.osaka-u.ac.jp

大阪公立大学 企画部広報課
電話:06-6967-1834、koho-listml.omu.ac.jp

(SPring-8 / SACLAに関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター
 利用推進部 普及情報課
TEL:0791-58-2785 FAX:0791-58-2786
E-mail:kouhou@spring8.or.jp

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准教授 境 毅

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放射光のあらゆる表情を一括撮影
~アンジュレータからの放射パターンの全体像を世界ではじめてエネルギーごとに可視化~


2025年4月30日
高輝度光科学研究センター
理化学研究所


高輝度光科学研究センター(JASRI)研究DX推進室の工藤統吾特任研究員、分光イメージング推進室の鈴木伸司研究員、ビームライン光学技術推進室の佐野睦主幹研究員、糸賀俊朗主幹研究員、回折・散乱推進室の増永啓康主幹研究員(技術担当)、ビームライン光学技術推進室の後藤俊治特別嘱託研究職員、理化学研究所放射光科学研究センターの高橋直上級技師らのグループは、大型放射光施設SPring-8[※1]のBL03XUにおいて、ダイヤモンド薄膜とシリコンドリフト検出器(SDD)[※2]を用いることで、放射光X線ビームの詳細なプロファイルを可視化する新しい測定法を開発することにはじめて成功しました。
特に、フロントエンドスリット(FES)[※3]スキャンを用いることでビームの可視化に成功したことは、アンジュレータ[※4]による放射パターンを広範囲に観察する上で画期的な成果です。このような方法でFESの上流の放射パターンを可視化した例は過去にありません。
また逆にピンホールを取り付けたSDDのほうをスキャンして測定することで、エネルギー分解された光軸の精密な計測が可能であることを示しました。この測定法は、アンジュレータ放射光のビーム中心を、アンジュレータ上下流に設置された偏向電磁石からの漏洩光の影響を受けることなく、正確に決定することを可能にします。
本研究成果は、放射光施設のビームラインの初期アライメントの効率化に貢献することが期待されます。また、現在計画が進められているSPring-8-II計画の光源(注1)における放射光ビーム診断への応用も期待されます。
今回の研究成果は、国際科学雑誌、「Journal of Synchrotron Radiation」オンライン版に4月22日に掲載されました。

論文情報
雑誌名: Journal of Synchrotron radiation
題名 :Method for visualizing detailed profiles of synchrotron X-ray beams using diamond-thin films and silicon drift detectors
著者:Togo Kudo, Shinji Suzuki, Mutsumi Sano, Toshiro Itoga, Hiroyasu Masunaga, Shunji Goto and Sunao Takahashi
DOI:10.1107/S1600577525002838


【研究の背景】

従来、アンジュレータ放射光の正確なビーム中心の決定は、偏向電磁石からの放射光の混入によって困難でした。各国の放射光施設では、この問題を解決するために、アンジュレータギャップ値ごとのX線ビーム位置モニター(XBPM)による測定値の補正や、偏向電磁石からの放射光の混入を最小限に抑えるためのマグネット配置のなどの対策が導入されています。しかし、このようにビームモニター技術が進歩しているにもかかわらず、偏向電磁石からの放射光の混入を完全に無くすことは依然として難しいのが現状です。そのため、X線ビーム中心を正確に決定するための新しい方法が求められていました。研究グループは、この問題を解決するためにエネルギー分解能を有する2次元検出器を用いたピンホールカメラ[※5]型ビームモニターが有効であることを明らかにしてきました(注2)。この方法を推し進め、更に検出器のエネルギー分解能を向上させることで、より詳細なビーム形状の情報を得ることができると予想しました。


【研究内容と成果】

本研究では、薄いダイヤモンド膜を散乱体として使用し、シンクロトロン放射ビームの詳細なプロファイルを可視化する方法を開発しました。
まず、フロントエンドスリット(FES)を0.4 mm×0.4 mmの開口で2次元スキャンすることにより、固定位置に配置したSDDを使用してエネルギー分解能イメージを取得することに成功しました(図1,図3,図4,図5)。これらの画像から、FES上流の前置スリット(開口φ4 mm)を通過後の広範囲のアンジュレータ放射分布が計測され、SPECTRA[※6](注3)による計算機シミュレーションと良好に一致しました。このような測定はこれまで行われておらず、本研究の重要な成果の一つです。
次に、FESは固定位置のままで、ダイヤモンド膜を通過したX線をピンホールカメラの原理で結像し、SDDの二次元スキャンで測定しました(図2)。この構成により、FESによって整形された1.5 mm×1.5 mmの開口サイズ内のピンクX線ビームの各エネルギーレベルでの放射パターン分布を可視化することで、ビーム中心を正確に決定することが可能になりました(図6)。
これらの方法では、従来のアプローチでの大きな問題であった周辺の偏向電磁石からの放射光の混入(数%)がエネルギー分解により0.01%以下に抑制されることで効果的に排除され、真のビーム中心を直接かつ高精度に決定できます。


【今後の展開】

本研究で開発された測定法は、放射光施設のビームラインの初期アライメントの効率化に貢献することが期待されます。また今後、2次元検出器や多素子SDDを用いることで、より高速なビーム位置の測定や光源の安定化フィードバックへの応用が期待されます。また、現在計画が進められているSPring-8-II計画における光源の放射光ビーム診断・制御への応用も期待されます。



図1 広視野X線ビームモニターのセットアップ図。 図の左から放射光(SR beam)が入射し、FES(フロントエンドスリット)を通って、ダイヤモンド薄膜を通過する。散乱光はピンホールを通り、SDD(シリコンドリフト検出器)で検出される。



図2 光軸計測X線ビームモニターのセットアップ図。図1とは異なり、ピンホールが2つの構成となっている。



図3 1次光のビーム形状(a)~(d)は検出したX線のエネルギーの違いを示す。



図4 2次光のビーム形状



図5 3次光のビーム形状



図6 高空間分解能型ビームモニターシステムによるビーム画像


注1)H.Tanaka et,al., Journal of Synchrotron Radiation 31 (2024) 1420-1437.
注2)T. Kudo, M. Sano, T. Itoga, T. Matsumoto and S. Takahashi, Journal of Synchrotron Radiation 29 (2022) 670-676.
注3)Tanaka, T. (2021). Journal of Synchrotron Radiation 28, 1267-1272.


【用語解説】


※1. 大型放射光施設SPring-8
SPring-8(スプリングエイト)は、理化学研究所が所有し、兵庫県の播磨科学公園都市に位置する世界最高水準の放射光を生成する大型施設です。利用者への支援などはJASRIが担当しています。名称の「SPring-8」は、「Super Photon ring-8 GeV」に由来します。この施設では、放射光を活用して、ナノテクノロジーやバイオサイエンス、さらには産業分野に至るまで多岐にわたる研究が行われています。


※2. シリコンドリフト検出器(SDD)
シリコンドリフト検出器は、エネルギー分散型X線検出器の一種であり、半導体技術を基にした装置です。従来型のシリコン検出器(Si(Li)検出器)と比べて、高い計数率での動作が可能でありながら、同等のエネルギー分解能を維持できます。つまり、エネルギー分解能を保ったまま、多数のX線を効率よく検出できます。


※3. フロントエンドスリット(FES)
フロントエンドスリットは、シンクロトロン放射光の強力なビームサイズを制御するために設けられた、加速器内の高熱負荷対応スリットです。ビームを斜め方向から入射させることで、熱を広い面積に分散させながらビームの形状を整えます。そのため、構造としてはビーム方向に長く、水冷機構を備えた形状となっています。


※4. アンジュレータ
アンジュレータとは、加速器によってほぼ光速まで加速された電子ビームを、周期的な磁場を作るネオジム磁石の配列によって蛇行運動させることで、強い電磁波を生成する装置です。SPring-8では、このアンジュレータを中心とした放射光源が用いられています。


※5. ピンホールカメラ
ピンホールカメラ(針穴カメラ)は、理科教材としても知られるシンプルなカメラで、箱の片面に小さな穴を開け、反対側に半透明のスクリーンを取り付けることで像を映し出します。この原理はレンズが使えないX線領域でも応用可能です。本研究では、X線の強度が低下し画像が暗くなるという特徴が、光子を一つずつ分離して検出する上で有利に働いています。


※6. SPECTRA
SPECTRAは、偏向電磁石やアンジュレータから発生するシンクロトロン放射の光学特性を計算できるソフトウェアです。各種SR(放射光)光源の設計や評価に用いられています。
https://spectrax.org/spectra/index.html


《問い合わせ先》
工藤 統吾(クドウ トウゴ)
高輝度光科学研究センター 研究DX推進室 特任研究員

高橋 直 (タカハシ スナオ)
理化学研究所 放射光科学研究センター 上級技師

(報道に関すること)
高輝度光科学研究センター
 利用推進部 普及情報課
TEL:0791-58-2785 E-mail:kouhouspring8.or.jp

理化学研究所 広報部 報道担当
TEL:050-3495-0247 E-mail:ex-press>ml.riken.jp

(SPring-8 / SACLAに関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター
 利用推進部 普及情報課
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E-mail:kouhou@spring8.or.jp

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工藤 統吾(クドウ トウゴ)
高輝度光科学研究センター 研究DX推進室 特任研究員

高橋 直 (タカハシ スナオ)
理化学研究所 放射光科学研究センター 上級技師

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インシリコスクリーニングから見出した抗精神病薬が黄色ブドウ球菌の病原因子を阻害するメカニズムを解明


2025年4月14日
国立大学法人 京都工芸繊維大学
公立大学法人大阪 大阪公立大学
国立大学法人 筑波大学
株式会社 丸和栄養食品
国立大学法人 京都大学
国立研究開発法人理化学研究所
国立大学法人 北海道大学


発表のポイント
黄色ブドウ球菌※1の病原因子「リパーゼ(SAL)」と抗精神病薬であるペンフルリドール(PEN)※2との複合体の立体構造を世界で初めて解明した。
インシリコスクリーニング※3によってPENがSALの活性を阻害することを予測し、SALへのIC50※4が7.3 μMと低く、阻害が非常に強いことを明らかとした。
◆宇宙空間の無重力条件下で作成した良質な結晶を大型放射光施設「SPring-8」の強力なビームを用いて測定し、X線構造解析※5により、PENが酵素の活性部位に結合することを見出した。
◆PENのようなSAL阻害剤は、既存の抗菌薬の効かないMRSA感染症※6や、黄色ブドウ球菌により引き起こされるアトピー性皮膚炎などの治療薬になることが期待できる。またヒトのリパーゼへの阻害の可能性も示唆されることから、抗肥満薬への適応も期待される。


SALとPENとの複合体の構造の図説


 京都工芸繊維大学分子化学系の北所健悟准教授らの研究グループは、大阪公立大学大学院生活科学研究科の神谷重樹教授、筑波大学医学医療系の広川貴次教授、株式会社丸和栄養食品の伊中浩治代表取締役社長、古林直樹研究員、加茂昌之研究員、京都大学大学院医学研究科医学研究支援センターの奥野友紀子特定准教授、理化学研究所放射光科学研究センター利用システム開発研究部門の引間孝明研究員(研究当時)、同センター利用技術・システム開発研究部門の山本雅貴部門長、北海道大学大学院薬学研究院創薬科学部門の前仲勝実教授らとの共同研究により、黄色ブドウ球菌が産生する病原因子の1つである「リパーゼ(SAL)」と抗精神病薬のペンフルリドール(PEN)との複合体の立体構造をX線構造解析の方法を用いて、世界で初めて解明しました。
 インシリコスクリーニングを用いた手法で、約5万種類の既存薬の中から、PENが既存のSAL阻害剤と同等のレベルでSALの活性を阻害することを発見しました。更に、宇宙空間での共結晶化に成功した結晶を、大型放射光施設「SPring-8」の強力なビームを使って測定することによって、SALとPENとの複合体の構造を原子レベルで解析し、PENによる阻害のメカニズムを解明することに成功しました。
 本研究成果は、構造情報を元にしたSALに対する薬剤の理論的な開発に役立つと考えられ、より有効性が高く副作用の少ない治療薬の探索・設計が可能になると期待されます。特に、SALが黄色ブドウ球菌の増殖に関与していることから既存の抗菌薬の効かないMRSA感染症や、黄色ブドウ球菌によって引き起こされるアトピー性皮膚炎などの治療薬の発展が期待されます。

【発表雑誌】
【雑誌名】Scientific Reports
【論文タイトル】Structural analysis shows the mode of inhibition for Staphylococcus aureus lipase by antipsychotic penfluridol
【著者】Kengo Kitadokoro(北所健悟), Shigeki Kamitani(神谷重樹), Takatsugu Hirokawa(広川貴次),Masayuki Kamo(加茂昌之), Naoki Furubayashi(古林直樹), Koji Inaka(伊中浩治), Yukiko Okuno(奥野友紀子), Takaaki Hikima(引間孝明), Masaki Yamamoto(山本雅貴), Katsumi Maenaka(前仲勝実)
DOI:10.1038/s41598-025-94981-4


研究の背景・先行研究における問題点
 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus;以下、SA菌)は、化膿した傷口や皮膚表面に存在する常在菌で、けがの傷口から体内に侵入し、多くの病原因子を産生して種々の病気を引き起こします。この菌は抗生物質が効かなくなるMRSAの原因となる耐性菌として知られています。MRSAは術後の免疫力の低下した患者や乳幼児が罹ると死に至る恐れのある病気です。また皮膚表面上には、肌荒れやアトピー性皮膚炎を引き起こし、毒素を出す悪玉菌のSA菌と、皮膚をきれいに保つ善玉菌の表皮ブドウ球菌などが、常在菌として混在しており、皮膚表面のバリア形成に影響しています。皮膚表面の常在菌のバランスが崩壊してSA菌が増えると毒素が産生され、皮膚のバリアが破壊されて肌荒れが起こります。多種多様な細菌が存在する皮膚表面でSA菌が異常に増えると、アトピー性皮膚炎が発症することがわかっています。SA菌が産生する病原因子の1つである「リパーゼ(SAL)」はSA菌の増殖と相関があり、増殖の際にリパーゼが脂質を分解して、皮膚の常在菌のバランスが崩れた状態を招くことで炎症物質を産生することがわかっています。このことからSAL阻害薬は抗MRSA薬の標的のみならずアトピー性皮膚炎の薬として注目されています。
 通常阻害剤を化合物スクリーニングで見出すには膨大な実験と時間がかかります。また得られた阻害剤から薬へと開発するには、動物実験なども含めて平均10年以上の日数が費やされることが問題となっています。
 そこで本研究では、インシリコスクリーニングの手法を取り入れて、非常に高確率でSALの阻害剤を予測しました。既存薬を転用して新しい疾患の治療薬に利用するドラッグリポジショニング※7法を念頭に、京都大学KEGGデータベースの5万種類並びに北海道大学化合物ライブラリーの1600種類の既存薬のデータベースの中から絞り出した15個の候補の中に阻害活性の高い抗精神病薬ペンフルリドール(PEN)を見出しました。更にこれまで大型放射光施設「SPring-8」の強い放射光を用いたX線構造解析の経験を活かし、SALと阻害剤であるPENとの複合体の立体構造の解明を試みました。

 

研究内容(具体的な手法等詳細)
 研究を始めるにあたりSALの立体構造については、すでに研究グループで決定していました。新たな阻害剤を探索する際に、研究グループは、インシリコスクリーニングという手法を用いて、SALの活性部位に結合するドラッグ候補をドッキングスタディによってコンピュータ上で選別し、その100個のリストから入手可能な15個の薬を調べた結果、強力な阻害剤を見出しました。通常、数万個の化合物スクリーニングを試しても全く阻害剤が見つからない場合があるのに対して、ドッキングプログラムGlideによって、高速かつ高確率で阻害剤候補が見つかりました。その結果、PENという既存の抗精神病薬がSALに対して、7.3 µMというIC50値で阻害することが判明しました。PENの阻害活性は、研究グループがすでに発表した抗肥満薬オルリスタット※8や不飽和脂肪酸のペトロセリン酸と同等の強い阻害活性を持つことがわかりました。
 本研究では、SALにこのPEN分子が結合した複合体の立体構造を、X線結晶構造解析の手法を用いて原子レベルで解明するため、まず大腸菌でのSALの大量生産系を構築しました。純度の高いSALを精製し、SAL単体の結晶とPENと共に共結晶化した結晶を作成しました。さらに、高品質の結晶を作成することを目的として、宇宙空間での無重力状態での共結晶作成プロジェクトに参画し、「きぼう」日本実験棟内で高品質タンパク質結晶生成実験(Protein Crystal Growth: PCG)を行いました。その結果、SAL-PEN複合体の高品質の結晶を得ることができました。
 X線回折実験およびデータ収集は、大型放射光施設「SPring-8」のビームラインBL41XUならびにBL44XUで行いました。PEN分子はSALの活性部位である「鍵穴」に対して、「鍵」分子としてぴったりはまり込んでいることがわかりました(前掲図)。またPENは「Y字型」の構造を取り、末端にハサミを持った細長い分子で、SALの触媒残基である116番目のセリン残基(Ser116)の近傍に結合していましたが、Ser116との直接の共有結合をせずに溶媒分子を介した結合であることがわかりました。フッ素並びに塩素原子を持つベンゼン環を一方のポケットの末端に固定し、それに繋がる6員環がSALと疎水性相互作用する形で存在していることがわかりました。別の末端にある2つのフッ化ベンゼン環が「Y字型」のハサミのように、活性部位の疏水部を挟み込んでいることもわかりました。これらの結合様式によって、PENはSALに対して高い選択的親和性を示すことが示唆されました。この成果によって、ドラッグデザインによる薬剤開発を進めるための基礎的知見が確立しました。

 

今後の展開
 PENとSALの相互作用から、薬のデザインのための構造基盤が構築されました。MRSAはほとんどの抗菌薬に耐性があり、新生児や老人などの免疫力の弱い患者を死に至らしめることがわかっています。MRSAに対する抗菌薬以外の薬の探求は重要で、SALの阻害剤は、MRSA感染症への新規な作用機序の薬として期待されます。本研究の結果は、SALを標的としてMRSAやアトピー性皮膚炎などの皮膚病の疾患に対して、その構造情報を基にした創薬(Structure based drug design)も可能にすると期待できます。またPENはSALと結合することで蛍光スペクトルに変化を起こすこともわかっており、SA菌の増殖を簡易に調べる診断薬としての応用も期待できると考えられます。

 

謝辞
 本研究は、日本学術振興会(JSPS)科研費(JP24K10199)、日本医療研究開発機構(AMED)創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS)(JP21am010170、JP21am0101072、JP21am0101092、JP21am0101114)の支援を受けて実施しました。またSPring-8での測定の際にお世話になりました長谷川和也博士をはじめとするBL41XUのスタッフの皆様、並びに大阪大学蛋白質研究所の中川敦史先生、山下栄樹先生をはじめとするBL44XUのスタッフの皆様に感謝いたします。本成果は、「高品質タンパク質結晶生成実験(JAXA PCG)」プロジェクトにより得られたものです。JAXAの山田貢博士、木平清人博士、岩田茂美博士に感謝します。またSpace BD株式会社のスタッフの皆様に感謝いたします。


【用語解説】


※1 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureusSA菌)
ヒトの鼻腔などに存在する常在菌で、化膿した傷口の膿の部分に多く存在し、感染症の原因となる多くの毒素タンパク質や酵素などの病原因子を産生します。病原性が強い菌で、基礎疾患のある人など、免疫力の低下した患者に対して、肺炎、敗血症、骨髄炎、関節炎などの重篤な感染症を引き起こします。


※2 ペンフルリドール(PEN)
抗精神病薬として使用されています。T型Ca2+ チャネルブロッカーで、統合失調症治療薬です。


※3 インシリコスクリーニング
コンピュータ上で(インシリコ)、阻害剤の候補を検索する方法です。


※4 IC50値(half maximal (50%) inhibitory concentration;50%阻害濃度または半数阻害濃度)
化合物の生化学的な阻害作用の有効度合いを示す値です。数値が低いほど阻害が有効であることを表します。数値として示した濃度で、薬物が標的とする酵素の半数の働きを阻害できることを示しています。


※5 X線構造解析
タンパク質の立体構造を決定する手法で、ターゲットとなるタンパク質を結晶化し、大型放射光施設「SPring-8(スプリングエイト)」などの強いビームを使って、X線照射して得られた回折データから、タンパク質の原子レベルでの立体構造を解析します。


※6 MRSA (Methicillin-resistant Staphylococcus aureus)感染症
メチシリンなどのペニシリン剤やβラクタム剤など多くの抗生物質が効かない耐性を持った黄色ブドウ球菌によって引き起こされた感染症で、幼児や高齢者など免疫力が低い患者が感染すると、多くの種類の抗菌薬が効かないために、治療が進まずに重症化し、死に至るケースがあります。


※7 ドラッグリポジショニング(drug repositioning;既存薬再開発)
既にある疾患に有効な治療薬を、別の病気に対して有効性を見つけ出すことによって、別の疾患への治療薬として開発する方法です。既にヒトでの安全性や薬物動態が試験済みであることから、新薬としての開発期間の大幅な短縮や研究開発コストを軽減することが可能となります。


※8 オルリスタット
抗肥満薬として大正製薬から「アライ」®として発売された治療薬で、ヒトの脂肪分解酵素である胃や膵臓のリパーゼを不活性化し、脂肪吸収を阻害する効果があります。


<本リリースおよび研究内容に関する問い合わせ先>
北所 健悟(きたどころ けんご)
京都工芸繊維大学 分子化学系 准教授

<報道担当>
京都工芸繊維大学 総務企画課
TEL:075-724-7016 E-mail: kit-kisyaatjim.kit.ac.jp

大阪公立大学 広報課
TEL:06-6967-1834 E-mail:koho-listatml.omu.ac.jp
 
筑波大学 広報局
TEL:029-853-2040 E-mail:kohosituatun.tsukuba.ac.jp

株式会社丸和栄養食品
TEL : 0743-56-2700 E-mail:inakaatmaruwafoods.jp

京都大学 広報室国際広報班
TEL:075-753-5729 E-mail:commsatmail2.adm.kyoto-u.ac.jp

理化学研究所 広報部 報道担当
TEL:050-3495-0247 E-mail:ex-pressatml.riken.jp

北海道大学 社会共創部広報課
TEL ; 011-706-2610 E-mail:jp-pressatgeneral.hokudai.ac.jp

(SPring-8 / SACLAに関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター
 利用推進部 普及情報課
TEL:0791-58-2785 FAX:0791-58-2786
E-mail:kouhou@spring8.or.jp

<本リリースおよび研究内容に関する問い合わせ先>
北所 健悟(きたどころ けんご)
京都工芸繊維大学 分子化学系 准教授

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大阪公立大学 広報課
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筑波大学 広報局
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TEL : 0743-56-2700 E-mail:inakaatmaruwafoods.jp

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