放射光(X線)で小さなものを観察する大きな2つの施設

XPR (X-ray Phase Retarder)

 

BL3 OHにはXFELの偏光を制御するためのX線移相子(X-ray phase retarder, XPR)が常設されています。
XPR装置を利用した実験を計画されている場合は、利用可能な波長や偏光条件などについて、課題申請前にXFEL利用研究推進室まで必ずお問い合わせください。

 

参考文献:
M. Suzuki et al., J. Synchrotron Radiat. 21, 466 (2014).
Y. Kubota et al., J. Synchrotron Radiat. 26, 1139 (2019).

 

 XPR装置図

XPR装置図

 

XPR装置には偏光を制御するための3種類のダイヤモンド結晶が備えられています。各ダイヤモンドのパラメータと対応する光子エネルギーを以下に示します。

 

スクリーンショット

 

各ダイヤモンド結晶を用いた際の円偏光度と透過率のX線光子エネルギー依存性の計算値を以下に示します。

 

円偏光度(左図)と透過率(右図)の光子エネルギー依存性

円偏光度(左図)と透過率(右図)の光子エネルギー依存性
11.562 keV(PtのL3殻吸収端)における垂直直線偏光度と円偏光度の測定結果はそれぞれ67 %、97%です。

 

直線偏光度(左図)と円偏光度(右図)のダイヤモンド結晶角度依存性

直線偏光度(左図)と円偏光度(右図)のダイヤモンド結晶角度依存性

 

さらに、従来のモノクロビームをXPRに入射する実験配置に代わり、ピンクビームを入射し、偏光制御後に単色化することも可能です。以下に実験配置例とその際の円偏光度の計算値を示します。

 

XPRを用いた実験配置例

XPRを用いた実験配置例。XPRにピンクビームを入射した後に単色化する場合 (a)とモノクロビームをXPRに入射する場合 (b)。TM: timing monitor; CCs: monochromator composed of channel-cut crystals; BM: beam monitor。

 

ピンクビームをXPRに入射し、その後単色化した際の円偏光度の計算値

ピンクビームをXPRに入射し、その後単色化した際の円偏光度の計算値
SACLAの場合、ピンクビームを用いることで、タイミングモニターとの併用が可能になります。

 

参考文献:
New J. Phys. 21 123010 (2019)