CDI(単粒子構造解析)

 

 

コヒーレント回折イメージング(coherent diffraction imaging; CDI)は、ナノメートルからマイクロメートルサイズの微小な試料を対象としたイメージング手法です。試料のサイズや必要な分解能に応じて、1 μmまたは100 nm集光ビームを利用して測定を行います。

 

 

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ー CDI実験の概念図
Y. Nishino et al., Phys. Rev. Lett. 102, 018101 (2009).

 

 

共用装置

 

 

 

ここでは、CDI実験の共用装置である MAXIC(Multiple Application X-ray Imaging Chamber) を利用した成果を紹介します。現在では以下の2種類の後継機が共用装置として稼働しています。

 
 
MAXIC-II

 

主にサブミクロンスケールの試料を対象にした装置で、MAXICの基本性能を引き継ぐものです。試料を 1 μm集光ビームで照明し、10 nmオーダーの分解能(q < 0.1 nm-1 @4 keV)でX線回折像を記録します。ナノ秒光学レーザーを利用したポンププローブ計測も可能です。

 
 
 
MAXIC-S

 

装置に内蔵された集光ミラー光学系により、試料を 100 μmビームで照明することが可能です。最小で約2 nmの分解能(q < 0.5 nm-1 @4 keV)でX線回折像を記録します。

 

 

 

参考文献:
C. Song et al., J. Appl. Cryst. 47, 188 (2014).

 

 

 

 

測定例:生きた細胞のイメージング

 

 

 

北海道大学の西野教授の研究グループは、マイクロ液体封入アレイ(micro-liquid enclosure array; MLEA)の中の Microbacterium lacticum 細胞を対象としたCDI実験を行いました。 MAXICを利用した測定により、生きた細胞の内部を可視化することに成功しました。

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ー 生きているMicrobacterium lacticum細胞のCDI実験
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ー CDI実験で得られたコヒーレント回折像(左)とデータ解析により再構成された実空間像(右)

[2014年1月7日プレスリリースより]

 

 

 

 

参考文献:
T. Kimura et al., Nature Commun. 5, 3052 (2014).

MAXIC-II

 

 

 

MAXICの主な機能を引き継ぐとともに、光学レーザーを利用したポンププローブ計測のための機能が追加された装置です。本装置の基本構成要素として、真空チャンバー内に2組の4象限スリットと試料マニピュレーターが 設置されています。必要に応じて、チャンバー内の光学ブレッドボード上にポンプレーザー用の光学素子をレイアウトすることも可能です。

 

 

基本的に、チャンバーはビームラインの汎用集光システムに接続され、マイクロX線ビームを利用して測定が行われます。ビームラインの光学系からの 寄生散乱X線 は、チャンバー内の2組の4象限スリット によって除去されます。試料からの回折X線の検出には、MPCCD検出器を利用します。

 

 

試料は、 多くの場合 窒化ケイ素薄膜などに担持され、 試料マニピュレーター に搭載されます。XFELパルスを照射された試料は破壊されてしまうため、照射するごとに新たな試料を照射位置まで移動させます。チャンバー には試料を観察するための顕微鏡が備えられており、照射位置の調整などに利用されます。

 

 

 

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ー MAXIC-II: 装置全体
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ー MAXIC-II: 真空チャンバー内部

 

 

 

MAXIC-S

 

 

この装置は専用の多層膜集光ミラーを内蔵し、スポットサイズ100 nm程度のXFELビームを試料に照射することができます。高強度の集光ビームを利用することで、試料の高分解能イメージを取得することが可能です。集光ミラーの他には、2組の4象限スリット、試料マニピュレータ、試料観察用顕微鏡、試料交換用ロードロック装置などが備えられています。

 

 

※MAXIC-Sは、北海道大学の西野吉則教授のグループとの共同開発により整備されました。 また、SACLA基盤開発プログラムの課題として高度化が行われてきました。

 

 

 

参考文献:
T. Koyama et al., Microsc. Microanal. 24, 294 (2018).

 

 

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ー MAXIC-Sを利用したCDI実験システムの写真: 左が上流側で、MAXIC-S、Octal MPCCD検出器、Dual MPCCD検出器の順に配置されている。

 

 

 

検出器

 

 

 

コヒーレント回折像を記録するためにMPCCD検出器を使用します。広角領域をカバーするOctal MPCCD検出器と小角領域向けのDual MPCCDをタンデムに配置し、広い角度範囲で回折像を記録します。

 

 

CDI実験は、主にBL2のEH3&4bで行われています。

 

 

 

XFELパラメータ

 

光子エネルギー(基本波) 4-20 keV
パルスエネルギー 光子エネルギーに(下図参照)
エネルギー幅(ΔE/E) ~0.5%(ニ結晶分光器なし)
繰り返しレート 30 Hz(BL2&3同時運転時)

 

 

 

 

参考文献:
M. Yabashi et al., J. Synchrotron Rad. 22, 477 (2015).
K. Tono et al., J. Synchrotron Rad. 26, 595 (2019).

 

 

 

(参考)光子エネルギーとパルスエネルギー・光子数の関係(BL3の場合)

 

 

BL3 PulseEnergy Curve

 

 

光学レーザー特性

 

 

 

  グリーンレーザー
Minilite, Continuum
光パラメトリック発振器*
NT232, Ekspla
Wavelength 532 nm 532 nm
Max. Pulse Energy ~20 µJ 波長に依存(下図参照)
Pulse Duration 3-5 ns 2-5 ns
Rep. Rate 10 Hz 30 Hz

 

 

*光パラメトリック発振器(OPO: Optical Parametric Oscillator)のパルスエネルギーは波長に依存します。

 
 
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製品については、メーカーへのリンクを貼り付けます

 

 

 

 

MPCCD検出器の標準的な配置

 

 

 

  MPCCD Octal MPCCD Dual
センサーエリア 110 mm x 110 mm 52 mm x 52 mm
MAXIC-II
標準的なカメラ長
1.5 m 3 m(EH3に設置)
9 m(EH4bに設置)
MAXIC-S
カメラ長 (固定)
0.32 m 1.6 m

 

 

ビームタイム前までにSACLAのスタッフが行うこと

 

 

 

以下の作業はビームタイム前にSACLAのスタッフが行います。

  • ・装置を実験ハッチに搬入
  • ・XFELのスペクトル測定、光軸調整
  • ・XFEL集光光学系の調整
  • ・4象限スリットのアライメント(租調整)

 

 

同期レーザーを使用するポンププローブ型実験の場合は、以下の作業も SACLAのスタッフが行います。

 

 

  • ・同期レーザースペクトル、光軸、集光の調整
  • ・XFELと同期レーザーのラフな位置合わせ
  • ・高速PDを使ったXFELと同期レーザーのタイミング調整

 

 

 

ビームタイム開始後にユーザー自身が行う主な操作

 

 

CDI実験を行うために、ユーザー自身に行っていただく実験操作を以下に示します。

 

 

  • ・試料交換とそれに伴う真空チャンバーの開閉や排気操作
  • ・4象限スリットのアライメント(租調整)
  • ・試料位置の調整
  • ・XFELと同期レーザー照射位置の精密調整(ポンププローブ型実験の場合)

 

 

測定の流れ(MAXIC-IIの場合)

 

 

 

  1. 1.マニピュレーターに試料をマウントする。
  2. 2.MAXIC-IIチャンバーの真空排気を行う。
  3. 3.チャンバーに備え付けの長作動顕微鏡を利用して、試料をX線照射位置に対してアライメントする。
  4. 4.試料のスキャンのためのパラメーター(照射位置の座標など)を設定する。
  5. 5.MAXIC-IIチャンバーと検出器との間のゲートバルブを開放する。
  6. 6.RunControl GUIを用いて試料のスキャンと回折像の記録を開始する。
  7. 7.チャンバーを大気開放して試料を取り出す。

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